第6話 銃声

通された局長室に入り、無人を思わせる雰囲気の中、扉の陰に局長の姿。


 扉のフックにネクタイで首を吊った局長を発見し、悲鳴をあげるナイト。急いで部屋の中を確認し、デスクの引き出しから、アカンサスバの紙切れを発見。

それを見るに、犯行予告状の下書きだ。そして分厚い本を取り出すと、題名は『ノットタイトル』。


 そっと素手で触れて、緊張した様子のマックスがページをめくる。



「・・・・・・ない?」



 老いた守衛が言った。


「ないんだよ、初版表記のページは」



「は?」


「・・・ない?」



「期限まで局長ですら見たらいけなかった、あの伝説の初版、それは・・・ない」



「どういう意味?」とナイト。


「君のお父さんは、それを縁に『探偵社キャトフル・キャトエル』の看板を立てた」


「なに?」


「初版寄贈の折り、確認を取っていいのは契約で守衛だけだった。だから私は、守衛になった・・・ずいぶんと時間がたった・・・秘守義務により誰にも言えなかったが、当時の同僚がページをちぎって食べた。そして密かに逃走し、海に身を投げて自殺した・・・当時担当したのは、刑事時代の君のお父さんだった。そして探偵社創設の折り、怪盗花猫すら捕まえるという意味で、あの名前にした」


「父は、そんなこと一言も言わなかったっ」


「秘密なんだっ・・・ロマン、なんだよ・・・」


 自分のこめかみに銃口を斜めに当てたマックスが、引き金に指をかける。あまりの早さだったがナイトがそれを咄嗟に払ったか否や、銃声がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る