華陽の影、夢魔への屈服
以下の挿話を参照。
🛕〔夢魔〕夢魔誕生 1、https://x.gd/99xE8
🛕〔夢魔〕夢魔誕生 2、https://x.gd/fBfKZ
🛕〔夢魔〕夢魔誕生 3、https://x.gd/sTyNW
🛕華陽の影、九尾の呪い、https://x.gd/OEEDl
北インド・コーサラ国の戦慄
カピラヴァストゥを灰燼に帰した
この国は、肥沃なガンジス川中流域を支配し、隣接するカシー国やマガダ国と覇を競う軍事大国であった。首都シュラーヴァスティーは、聖なるサラユー川の恵みを受け、黄金の尖塔が立ち並び、商人の隊商が絶え間なく行き交う栄華の極みにあった。
この国の主、ブラフマダッタ王は、勇猛果敢な戦士であり、法を重んずる君主として知られていた。しかし、ある酷暑の夕暮れ、森での狩猟中に霧の中から現れた絶世の美女に心を射抜かれたその日から、王の英明さは霧散した。彼女こそ、カピラヴァストゥを滅ぼし、更なる血と情欲を求めて現れた
王宮の最深部、白檀とジャスミンの香煙が重く立ち込める寝所では、ブラフマダッタ王が
彼女の内に秘めた獣の熱量は、男の精気を吸い上げては、その頬に不浄な赤みを差していく。
王が絶頂の果てに虚脱し、その生命力が細い糸のように彼女の体内へと引き込まれるたび、
「王よ、私のために更なる祭壇を。千人の民の悲鳴こそが、私の肌をより美しく輝かせ、あなたの夜をより熱く焦がすのです」
シュラーヴァスティーの街には死臭が漂い、黄金の尖塔は血の色に染まって見える。狐は、王国が熟した果実のように腐り落ち、人々の絶望が極致に達する瞬間を、下腹部を疼かせながら愉悦に震えて待っていた。
しかし、その「死の饗宴」を阻む者がいた。月光さえ届かぬ深夜、王宮の回廊に、この世のものならぬ甘美な香気が漂い始める。それは
現れたのは、実体を持たぬ幻影の夢魔、スナーヤミラーだ。そしてその傍らには、半透明の肢体を妖しく光らせるマイトリーイが控えていた。
マイトリーイはかつて、厳格な婆羅門の女性修行者であった。しかし、スナーヤミラーが仕掛けた「九度の誘惑」に抗えず、肉体の禁欲を完膚なきまでに破壊された末、法悦の中で修行を捨て、夢魔の使者へと堕天した存在である。彼女の琥珀色の瞳は、もはや聖典を追うことはなく、ただ溢れ出す情欲の雫を見つめている。
スナーヤミラーは、
「九尾の獣よ。汝の貪欲は、夢の世界の調和を乱している。人間を壊すのは妾たちの仕事……汝のような食い荒らすだけの獣に、この国は渡さぬ」
スナーヤミラーの声が、実体のない吐息となって寝所に浸透する。
「下劣な夢魔が、私の邪魔をするか!私は王朝を喰らい、千年生きた神獣なり!」
マイトリーイは宙を舞い、
「汝の力は肉の欲望に基づいている。ならば、その欲望を以て汝を縛らん」
マイトリーイが
スナーヤミラーは男の姿で
(何をする!……この熱さは何だ!私が、私が操られるというのか……!?)
夢魔が与えるのは、肉体的な接触ではない。魂を直接掻き乱す、夢の世界の純粋な法悦である。
「おやめなさい……!私は……ああ、っ、壊されてしまう……!」
拒絶の言葉は、裏返った喘ぎ声となって霧散した。自分を犯しているのが、憎むべき敵であるという「屈辱」が、皮肉にも彼女の魔性的な感度を極限まで高めていく。汚されることに、狂おしいほどの喜びを見出してしまう己の肉体に、
スナーヤミラーは容赦なく、男の熱量を
「この地は、汝が住まうには少々、夢が深すぎたようだな」
スナーヤミラーが冷たく囁き、最後の一突きのごとく、マイトリーイと共に濃厚な甘露を
翌朝、正気に戻ったブラフマダッタ王は自らの罪を悔い、王位を捨てて隠者となった。コーサラ国は救われたが、
狐は傷ついた体を引きずり、再び東へと向かった。紀元前十一世紀、殷王朝末期。彼女は
スナーヤミラーとマイトリーイは、狐が蒔く欲望の種を、自分たちの糧とするために追跡を始めた。狐が豪華な宴を開けば、夢魔はその宴をさらに淫らな幻覚で支配し、狐が男を誘惑すれば、夢魔はその男の夢の中で狐を凌辱して悦楽を横取りした。
漢の時代、高祖の皇后である
さらに時代は下り、日本の平安朝。
コーサラ国に伝わる古い経典『
「東の果てまで、影は追う。愛欲の獣が、夢の主を越える日は来じ。神獣の皮を剥げば、そこにはただ、蜜に溺れる獣が横たわるのみなり」
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