第19話 ナイトメア家とフォール
「そうだね。おそらくフォールは今頃、幹部を倒されたから私たちと同じように会議しているだろうね。でも、気にしないで行こう」
ルルアが真剣な表情に変わる。
よかった戻って。
いや、さっきのも……なんだかよかったが。
彼女はうす緑色のマカロンを口に入れて、咀嚼し、飲み込んだ後。
「とはいえ、気にしないって言っても、変に不安がらないでという意味だから。ちゃんと気を引き締めるのは忘れないで」
「結局どっちだよ」
ラノがやれやれという感じでツッコミを入れる。
「うーん……どっちだろうね……」
「ルルア。うちはお前がリーダーで不安だぞ」
「そっか。じゃあ話進めるね」
「おい!!」
ラノかわいそう。
ひどく、そう思った。
と、思いつつピンクのマカロンに手を伸ばす。
(あ、このピンクのマカロンおいしい!!)
食べるのは初めてだったが、こんなに甘いなんて……。
しあわせ……。
「リリ、お前も大概だな」
イレクが今度はツッコミをリリに入れる。
なんでだろう?
まあ、いいか。
「それで話の続きだけど、しばらくは二人一組で行動しようと思う。今、一人は危険だ。ペアはもう決めてて、私とヨゾラ。エリスとゼルゼ。イレクとラノ。最後にリリくんとサラ。みんなこれでいいかな?」
サラか……いや、悪いわけではないが、なんだかよく知らないのが事実。
上手くやっていけるだろうか……。
「あ、今俺と上手くやっていけるだろうかなんて考えてたね?」
「え! 何で分かるの!?」
「うーん、なんとなく」
するとサラはほほえむ。
そして、こう言った。
「ねぇ、お互い親睦を深めるために競馬見に行かない? 大きなレースがあるんだ。もちろん、吸血鬼とはいえ、俺もリリくんもハタチじゃないから、馬券は買わないよ。見るだけ」
「…………え?」
「拠点が一つやられた。それと幹部のマノが死んだ」
総勢五百を越える吸血鬼たちを一ヶ所にまとめられる程、大きな灰色の壁に囲まれ、所々いわゆるグーリンカーテンになっている廃墟。
そこに……フォールの全員が集結していた。
もちろん、幹部である三人、シノ・リルグ、レイグ・ミューゼリュート、ラセル・フミレオーネもおり、口を開いていたのはトップの──クルグ・シャートランゼである。
クルグは偉大な十三の吸血鬼の一人であり、容姿は銀髪セミロングヘアー銀目、身長は167センチメートル、胸は少し大きく、美しさと同時に怖さを感じる二十九才の女性だ。
「シノ、お前はマノの弟子だったんだろう? 心底辛いよな?」
フォールのエンブレムである、二つの龍が描かれた大きな旗が掲げられている下の教壇から降り、階段を下り、右のすみっこでブルブルと震えながら、オレンジを食べるシノの元へと歩み寄る。
「もちろんですよ……あいつら許せねぇ……!」
シノの容姿は赤いショートヘアー赤目、身長171センチメートル、幹部としてはまだ若く十九才の少年である。
そのシノは大好きなオレンジを握り潰しながら、涙を流す。
「師匠とは……あんな思い出やこんな思い出もあるのに……!!」
「……どんな思い出だ?」
「……怒りで忘れました」
シノは頭のネジが外れていた。
フォールの吸血鬼は大体そうだが。
「ならいい。復讐に集中できるからな……そうだった。そのマノにトドメを刺した能力を持ってるヤツを知ってるんだが、気になるか?」
彼の右耳に囁きかける。
「!! どんなヤツですか!? 教えてください!!」
目が充血し、食らいつくシノ。
「新入りのリリ・シャルルだ。見た目は後で写真で見せてやる」
「ありがとうございます!! やったぁ……殺せる……師匠の仇を取れる……!!」
彼は喜びすぐに左横に置いてあるバスケットいっぱいに入ったオレンジを一つ手に取り、かじる。
「…………リリねぇ」
──ある男が口を開いた。
「ソイツ、俺の弟子なんだ。気をつけた方がいいぞ……リリには教えれる事は全て教えてるからな。アイツはもう立派な殺し屋になった。その上吸血鬼になったときた。ま、俺を殺すためだろうがな」
レッド・ヴァンパイア すずたん @suzutann
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