一夏の自分探し。

もし、自分が人気者だったら。
もし、あの子と今も友達のままでいられたら。
もし、此処じゃない、別の何処かで生きることが出来たなら——。

そんな思いを抱える、中学生の藍川 慧。
慧が夏休みの朝目覚めたら、そこは自分の望んだ“此処ではない別の何処か”だった。
仲違いしたはずの友達が、自分のことを親友と言う。陰キャでぼっちだったはずなのに、友達に囲まれる人気者になっている。
なぜ、どうして。そう思いつつも、慧はそんな“理想の世界”で夏休みを楽しんでいた。

しかしある日、神社で出会ったとある少女に告げられる。
｢はやくどっちの世界で生きるか決めないと、一生元の世界には戻れなくなっちゃうよ｣
息苦しい本当の世界と、幸せな偽物の世界。
そんなの絶対、後者の方がいいはずだった。けれど、気づいてしまった…続きを読む