第6話 青い車
ぼくが小学生の時の話。
うちの車はとんでもなくオンボロな青い軽ワゴンだった。
なにしろ、親父の同僚が廃車にしようとしていたところを譲り受け、更にそこから10年乗っていた代物だ。
マフラーからは黒煙出てるし、給油すると車内はガソリン臭で満たされる。
エアコンも効かないし、運転席と助手席の足元からは謎の水が出てくるギミック付き。
どうやって車検を通していたのかわからないけれど、とにかくそんな有様で騙し騙し乗っていた。たぶん親父は動く限り永遠に乗るつもりだったのだと思う。
しかし、全てのものに終わりの日は必ず訪れる。
不死鳥のように走り続けたこの車にも、確実に最後の刻が近づいていた。
晩年はもう、冬の朝など何度も何度もリトライしないとエンジンがかからないようになっていた。
「モキャキャキャキャ!
モキャキャキャキャ!」
だいぶ近所迷惑だ。
思春期に入りかけていたぼくはこれがとても恥ずかしかった。
新車とは言わん。中古の一番安いやつでいいから乗り換えてくれと思っていた。
それでもうちの親父はそのあたりの羞恥心が壊れている人だったので、お構いなしで毎朝モキャキャキャするわけだ。
その日は、とても寒い朝だった。
何の用事かは忘れたけど、その日は珍しく家族で出かけようとしていたんだ。
親父がハンドルを握り、母親が助手席、ぼくが後部座席。
で、例によって親父がエンジン始動のモキャキャキャを繰り返していたのだけど、その日は特にかかりが悪かったようで何度も何度も繰り返していた。
「モキャキャキャキャキャ!
モキャキャキャキャキャ!」
そして何度目かのリトライの時、突然こんな音がした。
「ナーーン」
なんだ「ナーーン」て。車はそんな音出さないだろ。
そしてそれっきり、その車でエンジンがかかることはなかったのである。
結局、これが不死鳥の発した最後の言葉になった。
そういえば、母親がこんなことを言っていた。
「長く乗ったから、最後に『ありがとう』って言ったのかもね」
違うお母さん、あれ悲鳴だよ。
「もうダメなんだナーーン!」
でしょう。どう考えても。
無理やりいい話にしようとすな。
いまそれやるの Early Days 志乃亜サク @gophe
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