ボールの行方

凪野 ゆう

夢の中で失くしたものは、目覚めても見つからない。

フリーバッティングの玉拾いをしていた。

飛んできたボールを探しに行ったが、草むらの中か、用水路に落ちたのか、どこにも見当たらない。


ここは初めて訪れる土地だった。

見知らぬ家々が並び、風の匂いさえ違って感じる。


探しているうちに、気づけば民家の庭に入り込んでいた。

縁側に初老の女性が腰をかけていて、こちらを見ている。


「さっき、娘がファミレスで知らない人に会ったって言ってたけど、あなたですか?」


そう訊かれ、戸惑いながら首を振る。

心当たりはない。


けれど頭の片隅で、「もしかして、同僚かもしれない」と思った。

その瞬間、遠くから声が飛んできた。


「いつまでボール探してるんだ!」


同僚が走ってくる。

もうすぐ試合が始まるらしい。


貧乏チームにとって、ボール1球でも貴重だ。

焦りながらも、心はどこか遠くにあった。


そういえば、さっきバッティング練習を手伝ってくれていたのは——

西本さん、元・巨人のピッチャーだった気がする。

そんな人が、わざわざ我々のために?


申し訳なさに言葉を探しているうちに——


夢から、目が覚めた。


天井を見上げても、まだ胸の鼓動が早い。

リアリティのある夢だった。

だが、無くしたボールは見つからないまま。


そして——

あの娘さんは、いったい誰と会っていたのだろう。


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【あとがき】

この夢の続きが見れたら綴るつもりです。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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【共通タグ】

夢/記憶/不思議/日常の裂け目/現実と幻


【話別タグ】

ボールの行方/記憶の断片/夢日記

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ボールの行方 凪野 ゆう @You_Nagino

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