愛しいと想うことさえ許されず

貴族の婚姻は、家同士の決まり事。父と母の間に愛情は無い。愛の無い夫婦でも、子は出来る。跡継ぎとなる僕を産んだ後、母は僕を置いて愛する男の元に走った。父は僕に乳母をあてがって、自分も奔放に恋を重ねて謳歌していく。
祖父の元で厳格に育てられた僕が、社交の場に初めて出た夜、1人の美しい女性に心を奪われてしまった。
しかし彼女は、何と、父の恋人であった。彼女のお腹には、既に父の子が……。
父への憎悪を募らせる中、父が狩猟大会の最中に流れ弾によって殺害されてしまった。父の葬儀を物陰から見守り涙する彼女のお腹は、大きく張り出していた。僕は、彼女に声をかけた。「侯爵家で共にこの子を育てませんか。」と……。