最終話 最強の幼なじみ

 後からわかったことだけど、始まりのあの夜、流星群が観測されたという事実は存在しなかった。


 だったら、僕とユキの見た流星群の正体は一体何だったんだろう。

 そもそも、僕の見つけたネットの噂からして幻だったのか。


 謎は残るけど、あの夜がきっかけで今の僕たちの幸せがあることだけは確かだ。



  *



 僕とユキは同じ地元の大学に通っている。

 先輩に当たるユキのお姉さんは就活で大忙しのさなか、僕らのことを何かと気にかけてくれるのがありがたい。


 女としての自分を受け入れたユキは、軽音サークルでも男女問わず人気者だ。

 押しの強さは相変わらずだけど、最近は気遣いもできるようになったのが成長したところかな。


 偉そうなことを言っている僕はというと、ギタボ担当のユキの後ろでキーボードを弾いている。

 本格的に楽器を演奏するのは小学校の時習っていたピアノ以来だけど、ユキと喜びを共有できる今が一番楽しい。


 ユキと二人で過ごす時間は増えるばかりだった。周りからは「お前らいつも一緒にいるな」なんてあきれられるぐらいだ。




 今日も僕の部屋にはユキがやって来て、本棚の漫画を我が物顔で読み漁っていた。


「ユキ、さっきからスマホ震えてるけど」


 僕が言うと、ユキは面倒そうにテーブルの上へ手を伸ばした。


「どうせ姉ちゃんだろ。ハルとの進展具合しつこく聞いてきてウゼーんだよな」

「いっそ全部話しちゃえば? 恥じることなんて何もないんだしさ」


 お姉さんになら話してもいいだろう。気が早い話だけど、僕たちが大学を出たら同棲するって決めていること。

 なんて考えていた僕が甘かった。


「そっか。じゃあ昨夜したこと詳しく報告しとくか! ハルってば意外と……」

「そういう意味の全部じゃないから!」


 ユキの暴走には、僕もまだまだ振り回されることになりそうだ。




〈了〉

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ハルとユキ ロックなあいつとヤワな僕……って、そっちがTSするのかよ!? 真野魚尾 @mano_uwowo

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