ハロウィーンドリーム

春本 快楓

ハロウィーンドリーム

 気がついたら俺は、暗闇の中にいた。片手に一筋の光を放つ懐中電灯を持って、延々と続く闇の中を進んでいく。

 しばらく歩いていくと、親友の龍太の姿があらわになった。

 龍太は、いつものへらず口をたたかず、ただただ無言でマドレーヌを差し出してきた。

 と思ったら俺はいつの間にかそれを受け取っていて先へ先へと歩いていっていた。

 少し歩いた後、次は彼女のこめちゃんが現れた。こめちゃんもいつもの明るい笑顔を見せずに、仏頂面の無言でマカロンを渡してきた。

 その次は親父がどしどしと歩いてきた。いつも通り、無愛想な顔で柏餅を渡してきた。

 懐中電灯を前に突き出し、さらに前へ進んでいくと、今度はゆうりが来た。俺が嫌いなクラスメートだ。

 そいつは、グミを渡してきた。

 俺はそのグミは受け取ってから口に放りなげ、すぐにぺっとゆうりの前へ飛ばした。

 それから彼を通り過ぎて歩いて行くと、変な人に出会った。

 その人は、オレンジ色のパンプキンの仮面を被っていて、驚くほど体が細かった。男か女かも区別ができなかった。

 そのパンプキンが四個のせんべいを俺の前に差し出した。

 と思ったら、さっき色々なお菓子をくれた、龍太、こめちゃん、親父、ゆうりが俺の周りを囲んで、さっきまでの無表情とは一転、奇妙なうすら笑いを浮かべながらせんべいを四個ずつ両手に乗せて差し出していた。

 そして、四人の奇妙な顔はだんだんと俺の顔へ近づいてきた。

 

 

 ブルブルブル ブルブルブル、と音が鳴っている。目覚まし時計の音だとすぐに気づいた。

 部屋の窓はいつの間にか開いていて、吹き抜けていく風が、緩く留めているカレンダーをパタパタ揺らしていた。

「あぁ」

 今日は十月三十一日、ハロウィンだった。高校生になってからはそこまで特別な日ではなくなっていたが、今年は何かありそうだ。 

 ゆうりと仲直りできるよう、努力しようかな、となんとなく思った。

「おーい、海莉! もう七時過ぎてるぞ! 起きろ!」

 親父の点呼に、いつもは、黙れよと返すが、今日はやめておこう、と思った。

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