第1話 ロリコン疑惑
「.....来てもうたやんけ」
ピンポーンとインターフォンの音が清々しいほどの青空へ響く。桜の花がぽつぽつと咲き始めたようなそんな時期。
朝っぱらから冷え込んどってな、ほんまは布団の中でグーすか寝ときたかったんや。
せやけど可愛い弟分の頼みや言われたら、無視もできへんやろということで
しゃーなしに部下叩き起こして、車出させてここまで来た。
ガチャリいう音とともに、目の前の一軒家の無駄に重厚感ある扉が開く。
そこにおるんは、まだ世間の「せ」の字も知らんような、澄んだ目した少女や。
愛されてるのが、見ただけでよーわかる。
丁寧に手入れされた、2つに結んだきれいな黒髪。俺が触るんためらうくらいの、純真無垢な表情しとるわ。
「おじさん、だれ」
「おじさんやのうて、お兄さんな?俺は
「ふーん、まぁいいや。ところでこんなにかわいい女の子のおうちにやってくる、くるるぎはいまうわさのへんしつしゃですか?」
「ちゃうわ」
嘘や、前言撤回。こいつ、全然純真無垢ちゃうやんけ。いや、冷静になるんや俺。
確かにいきなり自己紹介はまずったな。
俺も自分の家の前に、こんな高級車でこんな格好のやつがインターフォン押してきたら、カチコミや思うし。
「お兄さんは君のお父さんの友達や。
今日頼まれたことあって来たんやけど、話、なんも聞いてへんのか?
お父さんになんかあったら
このかっこいいお兄さんに助けてもろとかんとアカン!とか」
「きいていませんし、わたしのお父さんにおともだちがいるとはおもえません」
娘にボロクソ言われとるやないか。まぁあいつは悪い人やないねんけど、
どっか抜けとるちゅうか、ドアホちゅうか、バカ正直っちゅうか、なんでこの世界におるんかようわからんやつやったけど、そこまで言わんでもええやろ。
「あのなお兄さんな、君のこと頼まれて来とんねん。
お父さんになにかあったら頼むでーって。」
「くるるぎはお兄さんって年なの?」
「論点がさっきから微妙にズレてんねん。まぁいい、お嬢ちゃん。お名前は?」
「
しょうらいの夢は人間国宝。
あと、ぜんせいきのレオナルド・デ◯カプリオとけっこんすること。」
「今のディカ◯リオも愛してやれや」
今の姿も歴戦の戦士っぽくてかっこええやろがい。というか無駄話はここまでにせんと話が進まん。
「ほな、とりあえず車乗ってもらおか。詳しい説明は車内でな」
「海も山もいやです」
「沈めんし埋めるわけ無いやろ」
ずっと待たせとった部下が運転席で居眠りしとったから、シバいて起こしたあとで風花を車に誘導した。
車内には、朝メシ代わりに買うたジャンクフードの匂いがまだ残っとる。
「いきなりゆうかいなんてロリのコンなの?」
「ロリコンって普通に言えや」
「今どきのコンプラにはいりょしてるだけ
でも小学3年生を車につれこむような36さいどくしん男はそうとしか思えない
きっと女の人に相手されないから私みたいな小さいこに手を出しちゃうのね
かわいそう。哀れ。同情。やっぱりへんしつしゃだ」
「ムカつくガキやな」
変質者、変質者うるさいな。さっきからなんやねん。
……ま、しゃーない。こんなことでピリピリしたら格好いい大人の威厳っちゅーもんがなくなってまう。
部下が車のエンジンをかけた瞬間、風花が窓の外を見ながらぽつりと呟いた。
「ねえ、おじさん。お父さん、、、最期まで格好良く頑張れてた、、?」
さっきと打って変わって不安げな声を出す風花を横目で見ながら俺は軽く肩をすくめて答えた。
「そうやな……うん、最後まで頑張っとったで。かっこよくな。なんや?やけに素直やな。お前、なんやかんやでよう気にかけとるやん。ええ子やわ。」
言いながら、思わず風花の小さい頭に手ぇ置いてもうた。
生意気で口も態度もデカいけど、こうして不安げに本心見せるあたり、まだちゃんと子どもなんやなって思う。
それでも、そのちっちゃい肩の向こうには、しっかりした気持ちが芽ぇ出てきとるんがわかった。
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お父さんの知り合いのお兄さんの話 からあげぽっぽ @karaagepoppo
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