マジシャンの戯言
ぐーんと大きな伸びをしたら、「ふぁぁ」と大きな欠伸が出た。
「今日も疲れたー」
そうひとりごちて、「あ」と俺は大事な用事を思い出した。
高校の同級生、山田と久しぶりに電話することになっていたのだ。
ヤバいと思いつつスマホを開く。
画面には不在着信の文字があった。
どうやら、今から10分ほど前にかけてきたようだ。
「申し訳ないことしたなぁ」
慌てて電話をかけると、数回のコールの後、
ガチャと音がした。
「もしもし、山田?ごめん、俺だけど。」
「あ、勇輝?久しぶりだな。元気してたか?」
電話口の山田は俺が遅刻したことなどまるで気にしていない様子だった。
「高校以来だな。つっても半年経ってないから
あんまり違和感ないけど」
「本当だよ、昨日も会って話してたぐらいの雰囲気だもんな、今も」
それからしばらく、お互いの近況を語り合い
くだらない雑談で盛り上がって、あっという間に30分が過ぎた。
俺はさっきから気になっていることを山田に聞いた。
「なぁ、何かさっきから音してるけど、音楽でも聞いてんの?」
「あぁ、今テレビつけてるんだよ。大型マジック特番。面白いから一緒見ようぜ。」
あまり気乗りはしなかったが、たまにはいいかとテレビをつけた。
画面の向こうではマジシャンらしき男がなにやら説明をしていた。
『これから、テレビの前の皆様から抽選でお一人、撃ち抜いてみようと思います』
俺は失笑した。
「ははっ、撃ち抜く?何言ってんだこの人?」
山田も笑い出した。
「意味分かんねー、もう少し手品っぽいのあるだろ」
二人でぶつぶつ言い合っていると、マジシャンの男は右手を前に突きだし銃の真似をし始めた。
『それでは発射まで、3・2・1、
ドーンッ!!』
しばしの沈黙の後、俺は再び吹き出した。
「いくらなんでも馬鹿げてるだろ、これ。
なぁ山田、もうチャンネル変えようぜ」
山田の返事はない。
「おい山田?聞こえてるよな?
え何でなんも喋らないの」
ふとテレビに目を向けると先ほどのマジシャンがにやりと気味悪い笑みを浮かべていた。
人間模型 佐々木劇 @tomo3559
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。人間模型の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます