第27話 ターニングポイント
「え?」
「え?」
気まずい沈黙が流れる。
あれ、俺はひょっとして勘違いをしてたというのか。
めちゃくちゃ恥ずかしい勘違いを……
「というか」
そんな俺とはお構いなしに、ずいっと梵は俺に近付いてくる。
近いです、梵さん。
「私、天がおばあちゃんの実孫だなんて知らなかったんだけど」
「あー……それは」
「正直、カミサマ云々よりそっちの方がびっくり」
「すーぱーわんだふる」
「すーぱー……?」
「ずるい、私は知らなかったのに」
「ひょっとして、最初から知ってたのに黙ってた?」
「そ、そんなことはなくて……」
「本当に?」
「えーっと、その……」
「安心して欲しい、天の言うことは本当だよ」
「本当?」
「カミサマだからね、あの村のことだったら何だって知っているさ」
「天がそのことを知ったのは昨日だ」
「……ひょっとしておばあちゃんは最初から知ってた?」
「それは……」
「おばあちゃん、最初から、知ってた?」
「は、はは……どうかな……」
「私、仲間はずれ」
「のーわんだふる……」
「まずい、私は識に顔向けできない……」
「なぁ梵、本当にあの人がじいちゃ……カミサマなんだよな?」
「……多分?」
「だよな」
「どうする?シメる?」
「怖いことを言わないでくれないか!?」
「あ、聞いてた」
「冗談だよおじいちゃん」
「冗談なのかよ」
「堺村ジョーク」
「なんだい、それは?」
「じいちゃんも知らないのかよ!」
「ジェネレーションギャップ、だね」
「私も、もう歳か……」
「そういや今幾つなんだ?」
「三百六十五歳だね」
「歳とかいうレベルじゃねえな!?」
「それはともかく、梵は話を聞いていたんだろう?」
「なら、今迫っている選択はわかっている。そういう認識でいいかい?」
「……」
こくりと梵は頷いた。
「ありがとう、じゃあ二人とも揃ったとこだし本題に入るとしよう」
「本題……今までのは本題じゃなかったのか!?」
「一応、君たち二人はカミサマの資格を持っている、というのは関わっているんだけどね」
そう、じいちゃんは困ったように笑った。
「これから私が話す事は、君たちに大きな選択を委ねることになってしまうだろう」
「だから最初に言っておくよ、私が不甲斐ないばかりに君らを巻き込んでしまって……本当にすまない」
「……俺は」
俯いた顔を上げる。
「俺は、覚悟は……出来てる」
「……天」
「梵を助けるって決めた時から、覚悟はできてる」
「なぁ、本題ってのはひょっとして……」
「ああ、お察しの通りだよ」
「君たち二人、どちらかがカミサマにならなきゃいけないんだ」
「その意味はわかっているだろう」
「……どうしても、俺たち二人のどっちかなんですか」
「この責務を放棄した場合、どちらにせよ国からは消されてしまうだろうね」
「それに、この村の人たちの存在意義を全て背負っている君たちに、カミサマになることを放棄するなんて選択肢を選べるのかい?」
じいちゃんの目は真剣だった。
「それは……」
「少なくともこの村出身の梵には、少し厳しいだろう」
「君たちが生き延びることができたとしても、その業を抱えて生きていくことになる」
「それに、もう識とは会えなくなるだろう。それでも君たちは、逃げてでも生きる道を選ぶかい?」
「私は……」
「俺が神になる」
梵の言葉を遮るように、俺は言った。
「天、それは……!」
「俺、この村に来て、何より梵と出会って少し変わったんだ」
じいちゃんの目を、きちんと見据えて俺は話す。
「梵に教えてもらったことを、梵天世界の壊し方を俺はちゃんと知りたい」
「だから、俺が神になる」
「……理屈、通ってない」
「そうだね、天。君は誰の為でもなく、梵の為だけにカミサマになろうとしているだろう」
「……なんか悪いかよ」
「ああ、あまり褒められたことじゃない」
「カミサマというのは、誰か一人のためになっていいものじゃないからね」
「……」
「私が、なる」
「カミサマに、私がなる」
「梵……」
「私は、こんな世界変えたい」
「この世界をよくするために、カミサマになりたい」
「こんな世界、紛い物なのに、縋るしかない私たちの世界を変えたい」
「私たちの生きている理由が、他に欲しい」
「天は?」
「え?」
「天は、何のためにカミサマになりたいの?」
「俺、俺は……」
「俺も、変えたい」
「じゃあ……」
「でも!」
色んなことが頭に巡った。
誰の為のカミサマ?
俺の為。
何のための力?
梵天世界を壊すための力。
俺は、何を変えたいんだ?
こんな世界か?それともこんな自分なのか?
俺は……
「天、君に一つの問いかけをしよう」
「え?」
「君が変えたいのはなんだ?」
「俺が変えたいもの?」
「ああ、そうさ。君は、何を変えたい?」
「俺、俺は……」
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梵天世界の壊し方 本野兎 @honnosan0717
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