ひとりでできるもん
クライングフリーマン
ひとりでできるもん
================= 基本的にフィクションです ============
留重(るしげ)はいつも失敗していた。
幼少期のあだ名は、『デッキーズ』。
何かの団体名のようだが、同級生がつけたあだ名は、『できず』の意味。
所謂『負けず嫌い』の、留重は皆から本当は疎まれていた。
いつも仲間はずれで、何かの遊び、ゲームに参加しようとすると、「恐れ多いので」と逃げられる。
小学校、中学校、高校と進んだが、彼に「見合う」部活は無かった。
ルールを守らないからだ。
大学受験に不合格だった彼は、親に泣きついた。
「そんな筈はないんだ。」
親は、経歴詐称という犯罪を行った。
彼が選挙に出たとき、他の立候補者の票より「何故か」多かった。
初めて大臣になった時、他の議員で気に食わない者がいた。
その議員が総理代臣になった時、彼は何かにつけて批判した。
「早く辞めろ」とまで言った。
その総理代臣は、「何故か」狙撃されて、命を失った。
彼は、総理が死んでも許さなかった。
「お前は、大臣に向いていない」と言われたからだ。
防衛代臣になった時、期衛隊を率いる立場にありながら、他国の物資輸送で外国に行くことを拒んだ。
「僕が死ぬと困るだろう?」
後に、その時ついて行って死ねばよかったなどと揶揄されるとは、夢にも思わなかった。
後年、次の次の総理になった貴志は、「次はお前だから」と言って、選挙を手伝わせた。
貴志は、あの男の『後継者の振り』をした。
貴志は、選挙大敗の責任を取って辞めた。
貴志は、留重に「次の総理」を譲ったが、「一時的」と条件を付けた。
そして、留重は、念願の総理代臣になった。
貴志は、粗品国にも麦国にもいい顔をしたが、本心は、粗品国だけ大事にする積もりだった。
でも、留重は、粗品国さえ味方なら世界をこの手に治められると信じていた。
「同じ出自」でありながら、留重は貴志より国民から嫌われた。
でも、留重は平気だった。
粗品国の「乙姫様」が言ったから。
「あなたが間違っていないのよ、周りが馬鹿なだけ。私の言うことさえ聞いていれば、全部上手く行くわ。だって、貴方は心から粗品国人だもの。」
留重は麦国には行かなかった、行きたくなかった。
「だって、あの国の大統領は、僕の嫌いな、あの男とマブダチなんだもん。おっかないもん。」
選挙があった。3回負けた。
「まだ、やれる。まだ、やれる。心配ない。」
乙姫様の使いに励まされて、留重は総理代臣を辞めなかった。
乙姫様の使いは、こう言ったのだ。「総理代臣を辞めさせる法律はありません。可能なのは、『お内裏様』だけです。『お内裏様』は、外国向けの『飾り』です。何でも一人で出来る貴方とは違うんです。」
貴志が、こう言った。「選挙に負けて責任取って辞めるのは、総理代臣の使命なんだ。そろそろ交替してくれ。もう準備は出来ている。」
「嫌だ!!!!!!!僕はまだ出来る。風邪も引いていないし、腹痛もない。腹痛に負けて辞めた、あの男とは違う。まだやれるんだ。」
ある時、目玉の大きな、元総理代臣が言いに来た。
「このままじゃ、党が潰れる。取り敢えず辞めろ。チャンスはまだある。」
困った留重は、乙姫様の使いに頼んだ。
「まだやれるんだ、辞めたくないんだ。口出しないように、党顧問にしてやったのに。」
1ヶ月もしない内に、『お内裏様』も『目玉の大きいオヤジ』も亡くなった。
警視羊羹が来た。「やりすぎましたね、総理代臣。」
留重の腕に冷たいモノが填まった。
留置場の中で、留重は叫んだ。「僕は殺していない。殺せとは言っても罪にはならないんだ。50年前に買った『六法全書』には、書いて無かったぞ。唆して殺させた罪、なんて。」
その後・・・の話は要らないですよね。
―完―
ひとりでできるもん クライングフリーマン @dansan01
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