どこか懐かしい世界観の正統派ファンタジー

ハフリは、癒しの歌を操る歌鳥の民にあって歌うことの出来ない劣等感を抱えた少女。そんな彼女は、はるか遠くの火山灰に覆われた村からやって来た少年ソラトに連れられ、森の外へ飛び出します。
陽気なスオウに強く優しいツムギ、可愛らしいハルハたちといった仲間たちと出会ったハフリは、次第に彼らと絆を深めてゆきますが、この村に連れてこられた本当の目的を知らされ、ハフリは自分自身、そしてソラトに向き合うこととなってゆく――。

緻密で美しい文章で綴られる物語に、一話目からぐいぐいと惹き込まれます。

どこか懐かしい世界観、登場人物たちの名前にも思いと意味が込められていてとてもよく作り込まれているので、物語にするりと入り込めてしまいます。

そして、繊細で細やかな心理表現、自然や人々の暮らしが目の前に浮かぶような巧みな情景描写、そして何気ない一言や場面が後々大きな鍵になってくる伏線の貼り方が本当に見事で素晴らしいです。
特に、村に向かうハフリとソラトがティエンに乗って空を飛ぶ場面の描写には思わず鳥肌が。これを映像で観ることができたなら、どんなに美しいだろうと思わせます。

美しく巧みな文章と緻密な世界観で紡がれる、誰にもおすすめできる少年少女の青春ファンタジーです。本編読了後は思わず笑みが溢れること間違いなしです。

ハフリとソラトに幸あらんことを!

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