『はじまり』はバレンタインデー

 ※このレビューは、第一章だけ読ませていただいてのレビューになります。あしからず。

 皆様、ごきげんよう。黒虎でございます。
 こちらのレビューは少々長いため、お時間があるときにでも読んでいただければと思います。

 このお話は本作の主人公である『山口勝紀』が、クラスメイトであり些細なことで世界を変えてしまう《運命の子供》である『篠宮理恵』がバレンタイチョコを渡すところから物語が始まります。

 しかも、篠宮理恵は自身が《運命の子供》であることを知りません。そして知ることも許されない立場の少女です。
 なぜならちょっとした感情の機微で世界が変わってしまう可能性があり、彼女の感情を揺るがす者には法的処置が執られるという恐ろしいことが待っているからです。

 そんな途轍もなく空想的な存在である少女に、急にチョコレートを渡された勝紀はなんとかその場は逃れたものの、どうやって断ろうかと公園で悪友である『鈴木比呂』相談を持ちかけます。
 普通ならどこか諦めがついて、《運命の子供》とのラブストーリーが始まりそうなものですが。彼にはどうしても、それができない理由がありました。

 ここで山口勝紀の少し昔のお話です。
 彼は高校に入る前に、面倒をよく見てもらっていた姉が亡くなって塞ぎこんでいた時期がありました。
 母親や比呂に部屋の外から声を投げかけ、どうにかして外に出そうとしますが。心が深く傷が付いた彼にその言葉は届きせん。そんなとき、ある一人の先輩が無理やり扉をこじ開けて部屋に入ってきて、彼を部屋から連れ出します。
 その先輩こそ――姉の親友であり、勝紀が今想いを馳せている『志摩由子』でした。
 由子は青空の下に勝紀を連れ出して、励ましの言葉と彼の姉が使っていたというレトロなカメラを手渡して
「これで写真を撮って天国にいるお姉さんに届けてあげなさい」
 彼女は無理やり扉を開けたときに怪我をした左手――現在も傷が残るほどの怪我――を気にするでもなく、勝紀の背中を押します。
 彼はその言葉に励まされ、姉や由子に恩を返すために写真を撮るようになり、今現在のレトロなカメラがシャッターを切る音が好きな高校生になりました。
 そして勝紀は由子に恩を返したいと思う気持ちと共に、人との距離感を大切にしたいと思うなか。由子に恋焦がれていたのです。

 そして時間軸は現在である公園に。
 相談しているうちに船が暗礁に乗っている現実に半ば絶望しているなか、まだ光りはないかと物思いに耽っていると。比呂からではない声が投げかけられて、彼らは驚きながらも視線を相手のほうに向けました。
 すると、そこにはいかにも不審者らしき黒尽くめの男が立っていました。
 最初は逃げ出そうと試みるも、他の場所から出てきた同じような男たちに道を塞がれて、仕方なく男に向き合い名刺を受け取るとそこには不穏な文字が羅列されていました。
 ――《日本政府運命省所属 監査機関実行部隊フェイト 隊長ホーク》
 ホークという男は勝紀たちに希望をなくさせる一言を放ち、第一章は終わりを迎えます。

 これが大間かな物語の冒頭である第一章のお話です。
 主人公である山口勝紀君の心理描写などが細かく本編では描かれていますので、気になる方はどうぞご一読ください。
 今も随時、天埜冬景先生が執筆しておられますが、これがどういった結末を迎えるのか楽しみですね。影ながら、ひっそりと応援しております。

 長くなってしまいしたが、これにてレビューのほうを終わらせていただこうと思います。長文にも関わらず、読んでいただいたユーザーの皆様ありがとうございます。少しでも皆様のお役に立てれば嬉しい限りです。
 それでは皆様、これからも良き『カクヨムライフ』を。