第六話 夢
の日の昼放課、俺はいつも彼女と会っている階段で座って天井を見ていた。
「あー…なんでまた涙が出始めちゃうんだろ…」
もう流れ尽きたと思っていた涙が少しだけ流れ涙を拭いていると階段を上がってくる足音が聞えた。
(あー…遥香だろうな…)
俺は彼女に見られないように急いで涙を拭くと確かに彼女が上がってきた。
「ったく…まだ泣いてんのかよ、泣き虫彼方」
俺はその話し方を聞いて少し思考が止まった。何故ならその話し方は…
「…永久…なのか…?」
俺は恐る恐る訊いてみた。
「ん?俺以外に誰がいるんだよ。」
「だって…いなくなったんじゃ…」
「お前が泣き続けてるから消えれるわけないだろ?」
永久は軽く笑いながらそう言ってきた。俺は涙を少しだけ流した。
「あ、それと、今こいつの中にいるの俺だけじゃないから。」
その言葉を聞いて再び思考が止まった。
「んーっと…ごめん、もう一回言ってくれね?」
「だから、今こいつの中にいるの俺だけじゃないから。」
(今、遥香の中に、永久以外の人格もいる…)
俺は自分が聞いた言葉を脳内で整理しなおした。
「えっと…何人ぐらい?つかどんなやつ?」
「ん?俺と遥香以外でだと7人かな?俺の可愛い可愛い弟とかね。」
「んー…よし名前考えよ、とりあえずお前の弟に会わせてくれね?」
「了解。」
俺がそういうと永久の雰囲気が変わった。
「んーと、はじめまして?」
「うん、初めまして。」
永久の弟だと思われる人格はとても幼かった。
「君に名前つけたいんだけど、いいかな?」
「僕に名前つけてくれるの?」
その子がとても嬉しそうに訊いてくるので俺は軽く笑って頷きながら頭を撫でた。
「えへへ」
その子は無邪気に笑った。
「んー…じゃぁ椿…かな?」
「椿!」
「気に入った?」
「うん!」
その子…椿はとても嬉しそうに頷いた。
「よかった。椿の他にどんな人がいる?」
「んー…優しい女の人といつもにこにこしてる女の人と…僕と一緒に寝てる女の人と、あと落ち込みやすい女の人とよく寝てる男の人と永久にぃとよく喧嘩してる人かな?」
俺は椿からの情報でなんとなくで名前を考えた。
「んー…じゃぁ最初の人から優香、優衣、篝、月夜、不和、弥生かな?」
「おー彼方にぃ凄い。」
俺は椿に彼方にぃって言われて何故か少し嬉しかった。普段弟にお兄ちゃんと呼ばれることがないから嬉しかったのかもしれない。そして昼放課の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
「じゃぁ、昼放課終わったから遥香ねぇに変わるね?」
「おう、分かった。」
俺はそう言って椿を撫でた。そして椿の雰囲気が変わった。
「ん…彼方…ぎゅー…」
彼女が腕を広げてそう言ってくるので俺は彼女を抱きしめた。
「ほら、昼放課終わったから教室戻りな?」
俺がそう言うと彼女は笑顔で頷いて教室に戻った。
「さて…俺は帰るか…」
三年生は午前中授業だったので俺はひとまず家に帰っていった。
「うー…さみ…」
俺は家に居たくないので、彼女を迎えに行っていた。
「ごめん、お待たせ…」
しばらく待っていると彼女が出てきた。
「別に気にしなくていいよ?とりあえず行こうか。」
「うん。」
俺と彼女はいつも寄る公園に向かって自転車を漕ぎ始めた。
公園に着くと俺は遥香にもたれかかった。
「ねぇ…遥香…俺さ…」
俺は遥香に自分の夢みたいなもの言おうと思い話しかけた。誰かに笑われるかもしれない。でもそれでもその夢のきっかけをくれた親友のためにも、少しずつやってみようと思う。理不尽があるかもしれない。馬鹿にされるかもしれない。それでも、少しぐらい挑戦してみようと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます