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用語解説

■ゾンビ

 偽生者ぎせいしゃ。生物学的に完全な死を迎えながら、再びよみがえった者。基本的に若く、損傷が少ない死体からしか発生しない(頭や心臓、生存に必須な部位が完全に破壊されていると、まずよみがえってこない)。

 生前の「肉体」と「記憶」を保持しながら、「人格」が異なるため、前生ぜんせいの遺族や友人とトラブルになりやすく、迫害されている。

 発生の原因は不明。もちろん、噛まれて感染したりもしない。

 若干肉体には変異があり「温感痛覚の任意ON/OFF」が可能なので、迫害地域では「どうせ痛くないから」と激しい暴力にもさらされる。

 例:男の肉体に女の人格が入る、日本人の肉体にエチオピア人の人格が入る、など。本人の記憶は肉体のそれに準じるが、自分の性別や肌の色に違和感を覚える。

 ※前生……その人物がゾンビになる前の人格、人生。「前の自分」。


■モータル

 未死者みししゃ。「まだ死んだことがない者」。ゾンビの発生以来、その対義語として作られた「普通の人間」。現在の地球人口の大半もこれである。

 両親、または片親にゾンビが含まれる場合でも、死んだりよみがえったりしていない限り、その者はモータルである(生まれつきのゾンビはいない)。


■ワイト

 還死動体かんしどうたい。ゾンビたちを研究し、よみがえりのメカニズムを再現しようとした過程で生まれた副産物。旧世代の失敗を踏まえ、自我や人格を持ったワイトは存在自体を禁忌とされている。

 材料となる死体は、喪失者ロスト登録したものに限られるが、無登録の違法ワイトも多い。また、喪失者登録は刑罰としても行われるため、大半の合法ワイトは犯罪者の死体が利用されている。


■マインド(自我)ワイト

 またはマインド。生前の人格と記憶を保持して動くワイト。

 禁忌の研究「死者蘇生」の結果だが、その存在がばれると、インゴルヌカはとてつもないバッシングを受ける。少なくとも、建前上は。


■多腕(多肢)ワイト ※16/3/7追加

 複腕(第二、第三の腕)を増設されたワイト。人体はその構造上、新たな腕を追加しようとすると、肋骨などと干渉して付け加えるのが難しい。また、追加したとしても元の腕より筋力などが弱くなりがちである。

 ワイトはフィラメントによってその弱点を補うことが出来るが、総じて高コストになる。対ワイト戦闘のセオリーがサクセット武器(※後述)による四肢切断であることを考えると、四肢が多いワイトはそれだけ手強いこととなる。

 作中では、サイゴのエヴァネッセンス49(ブラックウィドウモデル・シリーズ)がこれにあたり、高価なワイトである。


■ネクロポリス

 原義は、巨大な墓地または埋葬場所。本作では、ワイトの製造や研究が許可され、多くのゾンビが住む産学連携都市などを指す。

 ただしインゴルヌカとそれ以外では研究もゾンビの扱いもかなり事情が違うため、ほぼインゴルヌカと同義語。


■インゴルヌカ

 フィンランドのラップランド地方に存在する、兵庫県とほぼ同面積の都市。旧ロヴァニエミ。人口ざっと六百万人なので、フィンランド一国の人口を一都市で半分占めている。学者、研究者、ゾンビとゾンビマフィアなどが作り上げた。

 開き直りが凄まじく、市内では様々なワイトクリーチャーが見られる。


■アンダーテイカー

 弔い人。英語の葬儀屋とは異なり、よろずワイト請負い業者のこと。

 喪主クライアントの意向を受けて、違法ワイトを探して取り戻したり、暴走したワイトを止めたりする。


鎮伏ちんふく

 アンダーテイカー・サイゴが師匠から受け継いだ屋号。もともとは日本の拝み屋が名乗っていたものである。

 読みが「ちんぷくや」でないのは、奈良~平安時代の古い日本語(濁音、半濁音がない)に基づいているため。


還死作動剤アンザナテジック還死剤アンジー

 ワイトを動かしている基本的な薬物。腐敗や死後硬直を停止、および回復させ、生前の活動を再現する。死体の状態さえよければ、生前の意識を数日は継続させることが出来るが、徐々に混濁し、自我が崩壊する。

 すべてのワイトは、定期的な還死剤の投与が必要。

 また、UD移植を受けた人間も還死剤が必要になる。それ以外の人間が飲んでも、毒にも薬にもならない。味は様々だが、還死剤から出来た清涼飲料水もあり。


■フィラメント

 死霊回路。

 ワイトの筋骨や神経を担うもの。無理やり生きた人体に植え付けると、拒絶反応に寄って死亡しかねない。現代最高のスーパーコンピューターであり、それゆえに高度な人工知能を組んで、死体に生きた人間のような挙動を取らせることが出来る。


■UD臓器、UD義肢

 臓器や手足単位のワイト。損傷の激しい死体などから使い物になる部位を取り、還死剤だけで製造される。これらを利用したUD移植は、通常の移植より拒否反応が極端に低く、インゴルヌカの経済を支える重要な産業となっている(医療観光)。

 一方、危険を承知で、フィラメントによって強化された肢を求める者も後を絶たない。


■サクセット

 フィンランド語の「はさみ」。フィラメントを破壊する薬物であり、それを利用した対ワイト武器を指す。元々はUD移植のため、解体するワイトのフィラメント抜きに利用されていた。

 ワイトを「倒す」にはかなりの高火力が必須になるため、素早く「止める」ためには、サクセットで手足や腰部のフィラメントを破壊していくのが基本。


霊安課モーグ

 インゴルヌカ市警察(IGPD)、刑事局特殊捜査部霊安捜査隊。

 死体保護法に基づき、死体密売取り締まりなどにあたる。警察でも多くのワイトが働いており、警察ワイトドッグ、警察ワイトトナカイなどの動物ワイトも多数。


■死体泥棒、死体強盗(グールズ)

 アラビアの伝説に登場する食屍鬼グールにならい、「死体を食い物にするやつら」の意。世界で最も死体が売れる都市として名高いインゴルヌカでは、様々な形態のグールズが群雄割拠している。


■尸解幇(シーチエパン) ※16/5/14追加

 中国系ゾンビたちが結成した相互扶助組織(パン)。基本的にはチャイニーズマフィアとして知られるが、社会的に抹殺されたゾンビが生活の糧を得るには、犯罪行為に手を染めるしかなかった。構成員同士は、自分たちを家族と見なす傾向が強い。

 現在は中国本土や香港で活動している所と、インゴルヌカを拠点とする三派に分裂している。


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死者、インゴルヌカにて 雨藤フラシ @Ankhlore

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