ラノベの極北ここに現る……!

最新66話まで拝読いたしましたが、64話以降は新章開始後まだ間もないため、第一の異世界63話までの感想となります。

未だ連載中ながら、「遂にラノベもここまで来たか!」そう思わずにいられない意欲作の誕生を予感しています。
ラノベの特徴の一つに、己の登場人物たる立場に自覚的なメタ言動の多さがありますが、そんな自己言及性を極限まで突き詰めると一体どうなるのか……その答えが、この作品の主要モチーフとなる【著者と主人公の対立構造】に表れています。唐突にラノベ世界の主人公にさせられた彼の自我は、絶対君主であるはずの著者の思惑を乗り越えようとして、キャラが走るなどというレベル(level)を超越した反逆(rebel)に帰着します。こんなに自覚的で著者に反抗的なキャラクターは見たことがありません。転生先の異世界にすんなり順応し、与えられたチート能力を粛々と駆使していく従来のラノベに、真っ向から斬り結んでいくかのようです。
こう書くとなんだかイロモノっぽく受け取られそうですが(事実イロモノ的描写も枚挙に暇がないのですがw)、ラノベの文法を熟知していなければここまで面白くは書けませんし、物語上の伏線はしっかり張られているためエンターテイメント性も充分。難解なだけの実験小説とは真逆の精神にも脱帽です。

魔王討伐クエスト編では、いよいよ本格的なファンタジー風異世界が舞台となっています。主人公の悪あがきがどこまで物語を豊穣にしていくのか? 今後も楽しみにしています。

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