2.5D/リアル世界の異世界リアル

最新鋭UFO

始まりの場所/成立し得ないプロローグ

君の転移が2次元世界を破壊した

第0話/誰得な自己紹介

第0話


 まずは簡潔に自己紹介がしたい。


 俺、高二男子、体格普通、フツメン(だと思う)、学力下の下、運動神経皆無、コミュ力皆無、恋愛経験皆無―――……皆無ばっかりの非リア充だ。


 人生一度きりの青春時代なのに非リア充な俺。異性にモテる素質も当然だが皆無。だからリア充になる努力なんて今までしてこなかった。


 するだけムダ、二次元で自己満してた方が百倍マシ。

 俺は中二の頃からそのように思い始めた。


 アニメとか漫画とかラノベとか。そういう敷居の低い快楽を愛した。二次元は三次元の代わりにはならないが、とても面白いから素晴らしい。

 特にラノベが好きで、男心をくすぐるような甘酸っぱい展開が大好物だった。主人公の立場になってみたいと憧れを抱きながら、ラノベを読みふけっていた。

 俺は一人、すっかり二次元の世界に没入していた……。


 だから全く気づけなかった。

 俺の男友達が全員、高校に入って彼女持ちになっていたことに。


 そう、彼らは友達の俺を出し抜いてリア充になっていた。しかも幼馴染や転校生など、二次元のヒロインでも人気なポジションの子をゲットしていた……。


 そんなわけでさすがの俺も彼らに触発され、非リア充のままでいたくないと思うようになった。俺にも女友達一人くらいできてもいいだろうに。


 ああ本音で言おう。俺もリア充になりたくて仕方なかった。

 ちゃんと分かっていた。ラノベを飽きずに読んでいるのはリア充に憧れているからだと。ラノベを読んで余計にリアルが辛くなってしまい、だからまた快楽を求めてラノベを読む。そんな悪循環に陥っていることも痛感できていた。


 きっと高三になっても二次元に没入しているだけなのだろう。

 俺は無味乾燥とした青春を過ごしてる学生の代表格だと思う……(泣)。


 とはいえ、俺が非リア充なのは俺の自業自得で間違いないことだ。

 高校ではクラス以外の生徒からも『いつも本を読んでるヒト』『本と対話してるヒト』『呼吸するように読書するヒト』『本の虫の虫』などと評判にされていた。

 どれだけ人付き合いしてなかったんだよ、って呆れられても仕方ない。

 というか最後のはただの虫ではないだろうか?


 いや、異性から見た俺なんて……ただの虫だ。下手したら虫未満の存在価値だ。

 だから高三になる今から頑張ってもムダだ。やはり二次元で自己満してた方が百倍マシだ。

 悲しいが高校卒業まで非リア充が確定。そして卒業後はさらにリア充から遠ざかる環境に身を置くのだろう……。


 いいかげん残念すぎる自己紹介に眠くなってきただろうから、話を結ぶとしよう。

 俺はラノベ好きな非リア充だ。彼女持ちになった友達には酷く嫉妬し、だけど高三からリア充を目指すのは手遅れで。


 だから俺は、神様に直接願いを言ったんだ。祈ったんじゃなくて、しかもこんな風に……致命的な言い間違いをしてしまったんだ。



 俺は―――ラノベ主人公になりたい。

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