悲しい体質を持った占い師のシエラちゃんと、お人好し過ぎるほど優しい錬金術師アズウくんの恋物語。
アズウくんは錬金術師といっても、指パッチンで焔を発したり、ムキムキボディの半裸状態で殴りかかってくるような輩ではありません(自分の部屋は爆発させちゃいますが……)。ちょっと頼りない感じもするけど、極めてまっとうな青年です。
そんなアズウくんが、ある日偶然に出会ったシエラちゃんの遠い日の悲劇の記憶を切り裂いて、悲しみの息の根を止めてくれるわけです。
そして、見事にデレさせてくれるわけです。でかしたアズウ! もっとデレさせろ!
「僕の命は君の物。君の命は僕の物」だなんて、なんて素敵な等価交換。なんて素敵なジャイアニズム(?)!
ジャイ〇ンもアズウくんを見習って、劇場版だけじゃなく、日頃からの〇太に優しくしてあげなきゃいけませんよ。それくらいの優しさに満ちた物語です。
シエラちゃん、末永く美味しいご飯を沢山作ってあげてください!
アズウくん、末永く部屋ごと爆発しろ!
流麗な文章が心にすいすいと染み込んできます。
絹のようにやさしい手触りの下に隠されているのは、「命」という重いテーマ。
ですが、重さを感じさせずにラストまで一気に読ませてしまうのは、ひとえに作者様の実力と、文書力の高さゆえ。
上にあげた台詞以外にも、キャッチコピーとなっている「いらない命なら僕に頂戴」など、心に残る素晴らしい台詞が出てくるのですが、何よりすごいと思うのは、これらの台詞が上滑りすることなく、読者の心に染み込んでくること。
これは、登場人物達がそれぞれの人生を背負って歩いてきたことが作中に描かれているからこそだと思います。
けれども、作品に抱く印象はあくまで優しく、読後感はじんわりと余韻をもって、しみじみとなります。
アズウとシエラの今後に幸せがあることを願わずにはいられません。
素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございます。
未読の方は、ぜひとも一緒にこの素晴らしさを味わってください。