ループ、ループ、ループ。主人公の怒り、戸惑い、そして絶望。ループされているようで進んでいく物語。謎が解けていき絶望へと変わる。どうあがいたってどうにもならない世界へ。けれど! ここで主人公はループする。プロローグへと舞い戻ってくる。ここから始まる物語。読み終わった後。え? 終わり? と呆然としましたがよく見れば『起』です。なるほどとっても長めな起でした。
SF苦手な私には少し取っ付きにくい作品ではありましたが『世界五分前仮説』をググってみれば話の輪郭は見えてきました。きっとSF好きな人にはたまらない作品かもしれません。が、SF全く読まないよって私みたいな人にも軽快に交わされる登場人物達の会話と一人称の主人公の目線でこの世界の謎を少しずつ解いていく過程で知らず知らず物語は進んでいきます。起承転結があるのなら是非続きを読みたいです。
物語序盤から突然起こる世界の終わり。そして、その絶望的な状況下で行動する人物達。一体何が起きているのか? みんなは何をしているのか? 謎が謎を呼び、序盤から目が放せなくなった。
世界の終わりを目の前にして、各キャラクターの本音が垣間見える。その言葉や行動に触れて、主人公もまた変化していく。
話が進まないように見えて、実は話が進み続けている。一見無関係に見えたキャラクター同士が結びついて話が転がっていく。この作品構成力は実に見事だと思った。
一読者としてこの作品はタイムリープものなのか、世界線分岐ものなのかと食らいついて読み進めたが、真実はもっとずっと……。
人間の本質や魂についてまで言及したこの作品、しっかりSFがっつり哲学していてお勧めである。
作者さん完結お疲れ様。
同じ事を繰り返すようで実は変化してる。グルグルと同じ所を回っているようで、実は螺旋階段を上っているような余韻があった。
タイトルの通り、最後まで読み抜く事を推奨したい作品だ。