4つの視点が織りなす、絶望に至る群像劇

暴徒からいきなり少女の死体の描写で始まるこの作品。果たしてこの少女は何者なのか、そしてなぜ彼女は死んでしまったのか。本作はそんな謎を一つの軸にしつつ、4人の人物の人生を描いていく連作短編集だ。

主人公となるのは、彼女に騙されて多額の借金を背負ってしまったフリーター。波乱万丈の人生を送りながら専業主婦に落ち着いた一人の女性。トラウマを抱える少女の相談に乗るスクールカウンセラー。そして幽霊を見ることができる霊能力者。

まず、特筆すべきは作者の筆力だ。職業・性別・年齢も異なる4人を主人公にしながら、それぞれの日常描写を通じて、彼らの性格や価値観、どのような人生を送ってきたのかがはっきりと伝わってくる。
どの主人公も欠点を持っており決して魅力的な人物とは言い難いのに、作者の巧みな筆致によって読者はいつの間にか彼らに感情移入してしまい、物語が嫌な方向に進んでも目を離すことができず、やがて訪れる結末に震えてしまうことに……。

一見関わりがないように見える彼らの人生が、思わぬ形で繋がりを持っている点も面白く、各章のラストに登場する「小さな問題」というフレーズの使い方にもゾクリとさせられる。

(奇妙な事件の物語4選/文=柿崎 憲)

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