ゲームファンの少年による、大好きなゲームと個性豊かな美少女達に囲まれての、ゲームショップバイト戦記。
作者の経営者経験と得意分野をふんだんに詰め込んだと思われる、テレビゲームのように楽しいラブコメディです。
お仕事小説としての一面を期待して読み始め、実際その未知のエリアを味わう面白さもあったのですが、むしろ驚かされたのはラブコメディとしての完成度の高さでした。ハーレムラブコメで最も基本にして一番大事な『ヒロイン達の魅力』の描写が、賑やかで実に心地良いのです(美織は些かアクが強い感もありますが……)
ぱんつに一家言ある描写も素晴らしい。
実際のゲームショップ経営は中々に厳しいものと伺っておりますが、この作品ではどのように描かれるのか。
期待せずにはいられませんね。
個人経営のゲームショップ「ぱらいそ」。
経営危機に面していたぱらいそに、創業者の孫娘が店長代理として就任した。
ぱらいその復活のために繰り出す彼女の戦略が面白い。
他店への殴り込み、人を引き寄せる仕掛け、そして魅力ある店員のスカウト。
それもそのはず、作者はゲームショップの店長経験者という。
個人経営ならではの戦略には、どれもこれも作者の経験が活かされている(に違いない)。
一つ心配な点を挙げるとすれば、中古販売も手掛けるオーソドックスなゲームショップということ。
そんなゲームショップに未来はあるのか?(個人的にはダウンロード販売との闘いも読んでみたい!)
今後の展開に期待!
(追記3/29)
おお、こんな真相だったとは!?
美織JK編も楽しみにしています!
物語の主人公はゲームが大好きです。そんな彼はひょんな事から知人のゲームショップで働くことになるわけですが、しょっぱなから山あり谷あり、好きな事を仕事にするのは大変な事だと彼は身をもって知ります。あるいは主人公が働くゲームショップの店員の仲間たちにも災いの火の粉は降りかかります。
それでも彼らは決してあきらめません。
なぜなら、ゲームが好きだからです。とてもシンプルで子供じみた理由です。
でも子供の頃、親に怒られながら、ベッドの中でひっそりと隠れながら、深夜に眠い眼をこすりながらゲームにかじりついていた記憶を持つ人は少なからずいるのではないでしょうか。今にして思えば、どうしてあそこまで熱中していたのだろうと首を傾げる方もいるはずです。
この作品を読んでいると、不思議とそんな懐かしさを覚えます。
それはこの物語の彼らが、あの頃ゲームに熱を上げていた自分たちでもあるからかもしれません。
巻き込まれ型男の娘主人公、魅力的な店員の女の子達、ライバル店の存在等、読み手を飽きさせないキャラクター。
キャラの特長、表情の変化、ゲームの展開。非常に分かりやすく場の空気や対戦内容が伝わる。単純に文章力が高い。
そして何より、自分が特に評価したいのは『経営戦術』で間違いないだろう。
店長代理を勤める美織の突拍子の無い、ただ自分が楽しみたいだけではないかと思われてしまう、無茶苦茶な指示や言動、行動が全て計算された戦術となる。
その瞬間の驚きは、感動というよりも圧倒。
可愛らしい女の子の経営力にライバル店も頭を抱えるのは痛快。
頭の切れるライバル店のマネージャー、黛との対決が楽しみでならない。
元ゲームショップの店長という肩書きを生かす小話や発想等、ゲーム好きにはたまらない話が盛りだくさん。
飽きる事無く、サクサク読めた。
見ないと損をする作品。
最後に個人的な話で申し訳ないが、作者とは良い酒が飲めそうだ。
まず弁明すると、私はゲームが好きではありません。
ソーシャルゲームなんて金と時間の無駄だと思ってますし、ゲームセンターなんてお金を浪費するだけの場所とすら思っています。
そんな私でも、本作には引き込まれました。
こんなゲームショップを開きたい!
元ゲームショップ店長でもある作者の熱い思いが、冒頭からヒシヒシと伝わって来るのです。
それを代弁するのがヒロインである『美織』の存在です。
狡猾で、信長なみに破天荒な彼女の行動の裏には、祖父から譲り受けた『ぱらいそ』を楽園にしたいという切実な願いがあります。そして朴訥ながらもゲームを愛する主人公『司』の存在が、一種の緩衝材となって美織の強烈さを和らげてくれるのです。
この2人のタッグがこれからどんな楽園を作っていくのが、楽しみでなりません。