第9話 エピローグ
大浦さんの2度目の手術から2週間、左脚への25%部分荷重が始まった。前回の手術後より1週間遅らせただけであったので、大浦さんは少し心配をしていた。しかし、ローテーションで来ている武田先生が、整形外科部長の阿部先生との約束を破り、大浦さんに前回は自分のスクリューの留め方が足りなかったのかも知れませんが、今回はしっかり固定したので、安心して荷重練習をして下さいと伝えてしまった。大事になるかと思ったが、むしろ正直に話してくれた武田先生に感謝をし、武田先生から伝えられたことは、自分以外に誰にも話さなかった。
まだまだ、武田先生は上の先輩に怒られてばかりで心配になる面が多いが、誠実さを通した武田先生は、これからもたくさんの試練が待っているだろうと感じた。
この日も、いつもと変わらぬ1日がスタートした。変わった事と言えば、大浦さんが別人のようにリハビリに意欲的になり、体重も102㎏から89㎏に減量した。もちろん、自分が作成した減量プログラムによるものだが。
それともう1つ、自分が新人の時から指導してくれた長津さんが、来年の3月いっぱいで退職することが発表された。自分をここまで成長させてくれた先輩の1人が居なくなるのは寂しいが、田辺先生が言っていた、横の繋がりを大切に、これからも先輩として慕っていこうと思う。
私生活ではと云うと、大きく変わった事は無いけど、強いて言うなら生涯の伴侶を決めた事だ。専門学校の同級生で、同じ理学療法士として都内の病院で働いている。自分にはもったいないくらいの女性とは言わないが、仕事の事ばかり考えている自分を、温かく支えてくれる、自分には理想的な女性だ。自分は結婚をしないと決めていたが、これも神様が与えてくれた人生の試練なのかも知れない。
今日も1日頑張ろうと気合を入れてリハビリ室に入ると、いきなり浅尾さんが怒った口調で言ってきた。
「志村さん、整形外科部長が呼んでいるので、これから一緒に行きますよ」
「志村さん、又、何かやらかしたんですか?」
人の失敗を楽しむかのように金子さんが言ってきた。
さぁ、新たな試練の始まりです。
A calling ~天職~ ともぺぺ @tomopepe
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます