病み付きになる悍ましさ

僕はホラーが嫌いだ。何度触れても慣れないし、終わった後いつも後悔する。

「僕の妹はバケモノです」についても同じ。この作品を心から好きになることはどうやってもできそうにない。天使みたいな妹が出てきても、ちょっと天然な幼なじみが出てきても、その答えは変わらない。

でも読んでしまう。
画面をスクロールする指を止めることが出来ない。

「もうだめ……」
「うああああ!!」
「これ以上読んだら……!!」

何度顔を歪ませたことだろう。何度叫び声を上げただろう。何度次の話を見るのを止めろと自分に言い聞かせたことだろう。

読者は何かがズレている、でもそれが何なのか今ひとつはっきりしない、という違和感を抱えたまま、後手に回って物語を追いかけていくことになる。そしてだんだんと、でも確実に忍び寄ってくる悪夢を見せられる。

読了後、強い後悔が押し寄せた。
心筋に黒いナニカがへばりつくような不快感を感じた。

でもしばらくするとまた読んでしまうのだ。
あの怖さ、あの不快感、あの悍ましさをもう一度確かめたいと、そう思ってこの小説を開いてしまう。
次読めばもしかしたら大丈夫なんじゃないか。あの恐怖はただの夢で、僕の幻覚で、本当は優しくてキラキラした物語だったんじゃないか。そんな愚かな考えがふと脳を掠める。

そんなことはない。この小説には想像を絶する悍ましさと恐怖が眠っている。

そんなことは分かっているはずなのに。読んだら絶対後悔するのは自明であるのに。

僕はまたこの小説を読んでしまうのだろう。

あの恐怖(快感)をもう一度味わいたくて。

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