面白い。すっげぇ面白い。霊能力もない空手バカが世の摂理を捻じ曲げて除霊するなんて発想に、思わず「げえっ、そう来たか!」と叫んでしまった。
世の中の物理法則など、彼の前には無力!
だって読んでる間、ずっと頭の中で「空手道おとこ道」(https://www.youtube.com/watch?v=w9_CnGbpyQI)が流れてるんだよ。つーか今でもエンドレスで流れ続けてるし!
だけど話はふざけてなどいない。王道というべき展開で、空手だけに縋り、空手だけを信じ、空手に殉じる男に「俺にはこんな生き方しか出来ないんだ」という心の叫びが聞こえてきそうで凄く切なく感じる。
オレ様は、彼が目の前にいたら言ってやりたい。
俯くな、その生き方は誰にも真似出来ない生き方、お前にしか出来ない生き方なのだと。
空手家――格闘家の拳には想いが籠る。
しかも現代日本の常識から外れまくった修行をした奴の拳だ。
そんな漢の拳に尋常ならざる想いが宿らないはずもない。
そりゃあ思念体の最たる幽霊だって殴れるし、あちら側の住人にだってその拳は届くはず!
清々しいぜ。大好きです。
主人公の空手バカ天童旭をはじめ脇を固める女性陣も魅力的で、
彼らがこの鳴上市でどんな活躍をしていくのかが気になって一気に読んでしまいます。
そして一筋縄ではいかないであろう飛翔する強敵「ババア」の登場!
続き待ってます!!
(編集者ピックアップ/文=ファミ通文庫カワサキ)
多分作者は私と同世代だと思う。女神転生のネタが出てくるし。
描写の内容から、おそらくフルコンタクト空手諸派か極真の門下だろう。
今の若い人にはなかなか理解できないだろうが、昭和40年ころから平成10年くらいまで、空手を含む格闘技の黄金時代があった。私もその1人だ。しかし30を過ぎて仕事が忙しくなったり家族ができたりすると格闘技をやってる時間もなくなり、体力が落ちてくるし流行も過ぎる。そうなると若い時期を無駄にしてしまったと感じてしまうのだ。
この作者もおそらくそういう道をたどり、強くなったけどだからなんなの?っていう疑問と毎日戦ったんだろう。
わかる人にはわかる。格闘技は一種の宗教のようなものなので、人生を捧げてしまいたくなるのだ。でも、警察自衛隊学校の先生でもなければ、たいてい役に立たない。人を一撃で倒せても、所詮マージャンやコンピュータゲームと同じ、趣味の一つ扱いだ。鍛えた拳でも所詮素手だ。ナイフ相手に勝つのは相当難しい。
こういう作品を読むと、どうしても応援したくなる。天道くんは、僕たち空手バカにとっては理想の姿なのだ。だって、強くなったことに意味があるんだから。
まず、タイトルで思うことは在ると思う。
取り敢えず、それは、置いてほしい。
著者の作品は他にも拝読させていただいてるのだが、やはりこの作品も同じだった。
同じ、と言うと悪い意味に取られがちだが、そう言う『ワンパターン』とは違う。
何と言うか“泥臭い”のだ。
著者の作品はすべて、登場人物が“泥臭い”。わかり易く言えば、少年漫画の主人公だ。
何でも一直線、莫迦正直で一途だ。一見、斜に構えている者でさえ。
勿論物語は、コメディはコメディなのかもしれないけれど、油断すると涙腺にダイレクトアタックして来ることも在るので要注意。
随所に散りばめられた笑いや毒や涙腺ダイレクトアタックが、コメディと言う枠組みに嵌まらない。
じゃあホラーじゃないのか、と言えば、厳密にはどうとも言えない。
たまにゾッとするなら、ホラーであろう。
一番のホラーは著者じゃないかなぁとは、ここだけの、話として。