空手以外に何もない人がたくさんいた時代があった

多分作者は私と同世代だと思う。女神転生のネタが出てくるし。
描写の内容から、おそらくフルコンタクト空手諸派か極真の門下だろう。

今の若い人にはなかなか理解できないだろうが、昭和40年ころから平成10年くらいまで、空手を含む格闘技の黄金時代があった。私もその1人だ。しかし30を過ぎて仕事が忙しくなったり家族ができたりすると格闘技をやってる時間もなくなり、体力が落ちてくるし流行も過ぎる。そうなると若い時期を無駄にしてしまったと感じてしまうのだ。

この作者もおそらくそういう道をたどり、強くなったけどだからなんなの?っていう疑問と毎日戦ったんだろう。

わかる人にはわかる。格闘技は一種の宗教のようなものなので、人生を捧げてしまいたくなるのだ。でも、警察自衛隊学校の先生でもなければ、たいてい役に立たない。人を一撃で倒せても、所詮マージャンやコンピュータゲームと同じ、趣味の一つ扱いだ。鍛えた拳でも所詮素手だ。ナイフ相手に勝つのは相当難しい。

こういう作品を読むと、どうしても応援したくなる。天道くんは、僕たち空手バカにとっては理想の姿なのだ。だって、強くなったことに意味があるんだから。

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