物語は加速に加速を重ね、そして"果て"へと到達する

手が止まらなかった。と言えば、言い過ぎに聞こえるだろうか。

ファンタジーに慣れた者なら、洪水のように流れ込む用語の数々に混乱することもなく、またベタな要素に笑みを浮かべることもなく、素直に読み進めることができるのだろう。恥ずかしながら私はその手のファンタジーに不慣れだったため、設定を把握するのに四苦八苦する無様を晒していた――序盤は。
四章に区切られた本編。内初めの三章は、終盤へと進んでいくにつれ加速を始める。怒涛の展開に次から次へと明かされる秘密、そして新たに生まれる謎。きっと一章を読み終えた時、読者は誰もが同じ実感を持っていることだろう。しかし真に驚くべきは、その加速が三章に通じてさらに速度を増していくということだ。まるで拳銃に込められた弾丸のように、回転しながら急転回を繰り返す。射出された鉛は、四章という名の"果て"へと到達する。"果て"に広がるは広大な世界だ。"果て"から始まり、"果て"へと到達したこの物語は、無限の未来へと収斂するのである。

いささか比喩が過ぎたか。だがこれだけは述べておきたい。四章全てを読み終えた時、初めて読者はその可能性――エピローグ二編に触れることができる。これほど重厚で芳醇な読後感を味わえるのは至上の贅沢だろう。その贅をこそ、享楽として共有し語らいたいのである。

文字数、読了時間に見合った読後感、満足感。それがここにある。
四の五の言わずに、まずは読め。

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