「軽快」で「王道」な「本格」ミステリ

 嵐で閉じ込められた孤島で起こる殺人事件に、個性的な探偵たちがその推理をぶつけ合う。

 閉ざされた孤島。完全な密室。見え隠れする人外異形の影。
 本格ミステリの「王道」をしっかりと押さえ、超常に頼ることなく、解決はあくまで論理的に。
 個人的には、この手の孤島もので常に取りだたされる宿命、「どうしてこんな状況でわざわざ殺人が起こったのか?」に対する説明がうまいと感じた。

 本格ミステリ伝統の、ワトソン役による一人称の文体は軽快でとても読みやすい。助長なところがないテンポのよい展開も手伝い、一気に読み終えた。
 変に奇をてらったところがない丁寧な作品のため、本格ミステリを読んだことがない、という人にも入門編としておすすめできる。