エピローグ

 リビングで、違和感について考えていたときだ。

 背後に再び気配を感じたので、振り返った。どうせ、また誰もいないのだろうと思っていた。

 しかし、今度こそは人がそこにいた。

 赤い髪をした少女。初めて――いや、違う。

 僕は彼女を知っている。見たことがある。君の名前は――、

「折本、沙耶?」

 自然と口から出たその名前。

 すると、少女はとても嬉しそうに笑顔を見せた。僕の元に走り寄り、手を取る。

「行こう」

 少女は前方を指差した。そこには長い階段があった。

 手を引かれるままに、僕はついて行く。

 横には、婚約者である雪乃さんの姿があった。その横には、秋江君の姿。

 反対には、相川洋介、及川学の友人二人。また別の場所には、あの更科絵里子博士の姿。

 僕は思わず立ち止まってしまった。

「どうしたの?」

 赤い髪の少女、折本沙耶に問われた僕。

「いや、何でもない。これからどこに行くんだい?」

 気になったことを問いかける。

 彼女は、小さく笑ってみせた。

「永劫の安寧の地。孤独を感じる者がいない場所」

 その言葉を聞くと、何だか安心した。

「そうか」

 僕も薄く笑みを浮かべていた。

 


 

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全知全能のプログラム 滝川零 @zeroema

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