物語は終盤にさしかかるに従って急激に加速していく。家出中と申し出た少女、女性秘書、最愛の妻、無二の友人……
影響を受けたであろう作品の影も垣間見えるが、物語の終着へと上手く収束していった、そんな印象を受けた。心地良い読後感である。
SF界隈、最近では特に故・伊藤計劃氏が描いて見せた魂の重さについて考える機会が多いと感じている。例に漏れず私もその一人であるが。
人の意志の問題というのはたびたびディストピア的世界観によって語られるが、突き詰めると人権問題というところにまで切り込める深いテーマだと思う。この『全知全能のプログラム』という物語もそれを熟考する上で一つのきっかけになるのではないだろうか。自らの意志で行動できなくなり、ただ生きているだけの状態を人と定義し得るのか。どこまでが人でどこからが人ではないのか。皆さんもぜひご一読の上、考えてみて頂きたい。
自ら考え、行動すること、少なくともそれはあなたの意志である。