23/23.闇
巨木が支配する静かな雪の森は、いまや地獄と化していた。
無数の
森を円形に切り開き、巨石を並べた環状列石。偽りの神殿。
中心に据えられた、四角い祭壇。
あの島で見た、あの時の地獄だ。
ただ違うのは、円形の内側が青黒くなく、赤い。猛烈な熱を伴う紅蓮の円が、列石の中を埋め尽くしている。
りり……
中心の祭壇、その上の空中に、あの時と同じ卵殻が出現した。100の
そこへ。
すう、と上空から、何かが近寄ってくる。白く、丸い球体。
気球だ。
吊り下げた籠から、さらにロープが垂らされ、その先端に1人の
女。そして祭壇の上に捧げられているのは獅子の法王の生首。
ならば。
「ああ……やっと!」
気球が上昇。と、偽りの神殿から、真っ赤な炎を
だが届かない。
上昇の途中で力を失い、だあん、と、神殿へ落下する。
だが
ぱり、と卵が割れ、中からマヒトと同じ、男の赤子が現れる。その光景を、ひたすら魅せられたように見つめるだけ。
卵の中に、
「おおお……」
現れた赤子を、優しく胸に抱きしめると、
「私の子。そして神の子。貴方が世界を統べるのです」
あらん限りの優しさで、
「さあ、笑って『フヒト』。私の愛しい息子」
つづく
殻鎖記紀《カラザイストリア》(1) 青木兼近 @sizuru
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