本格伝奇のような題材を見事ラノベチックに料理してしまった快作(怪作)。


お祭りや縁日に欠かせないのは、何と言ってもやはり様々な出店で我々の空腹や物欲を満たしてくれる「テキ屋」。
本作ではそんな「テキ屋」の家に生まれた少年が主人公。世にも珍しい設定です。
が、それだけでなく、彼らテキ屋の業界で信仰される「神農の神」の力を受け継いだ主人公、実はある不思議な能力(体質)を持っていて……。

ドタバタあった末に、犬猿の仲と思われていた可愛い委員長宅の豪邸に上がり込むことになり――と、一見ラノベのテンプレートのような展開と思いきや、主人公の能力を活かした「公儀お毒見役」なる重要任務を任されることになってしまい、ラブコメのジャンルながらミステリーのように展開するストーリーは見ものです。

さらにさらに。
メインヒロインの古風な言葉遣いのロリ委員長(室長)が可愛いのはもちろんのこと、
ゆるふわ巨乳の金髪メイドさん、
さばさばした和服美人の料理長、
そしてきびきび系室長絶対護衛ウーマンの響さんなどなど……、
魅力的な女性キャラが揃っており、ニヤニヤできるシーンも数多く、エンターテイメントな文章力と学園ラブコメ要素、伝奇小説のような題材にサスペンス性と、サービス精神の塊のような小説だと思いました。

作者三太夫氏の知識もさることながら、余念のない取材や研究によって書かれた道教や神道などの民俗学、そして漢方などの薬学知識が終盤にも炸裂すること必至と思われ、ワクワクが止まりません!
皆様に是非読んで頂きたい小説ですので、ここに強くお勧め致します。

……最後に、この小説の出版を巡り、物騒で血なまぐさい事件が起こっていることが巻末おまけの短編小説『ダイモンの青い空』にて読めるのですが、こちらを読んでから本編をまた読んでみると、楽しい本編が少し違った物語に見えてくるので、それもまた一興かもしれません。

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