運転スキルと食欲以外は平凡な大学生、相田雅之。そんな彼の元に、ひとつ上の幼馴染である網屋希が地元へ戻ってくると連絡が入った。
網屋から飯を奢ってもらえることとなり、相田は彼を乗せて上機嫌で車を走らせる。
昔と変わらずワイワイと交わすやり取り。それを遮ったのは、突然震えた網屋のスマートフォンだった。
個性たっぷりのメンツが紡ぎ出す、社会の裏表を行き来する群像劇。
独特のテンポのやり取りに引き込まれれば、気が付く頃には時間が溶けてなくなっている。
友達の家に遊びに来たような、そんな気分にさせてもらえます。
日常、銃撃、クルマ、ごはん……どれかひとつでも引っかかったあなたは今すぐチェック!
突然目の前から消えた先輩が帰って来た。
ごく自然などこにでもある生活の中で、突如巻き起こるカーチェースと銃撃戦。誘拐事件に恋話。
少し前まで笑えていても、突如始まる緊迫した空気。
それでいて終われば美味しい料理が次から次へと相田の空腹を満たして行く。
個性豊かな異常な過去を持つキャラクターたち。
それぞれがそれぞれに傷を負いながら、互いに支え合い生きている。
文字数はたいへん多いですが、一章ずつ区切って読めば全然苦にならない長さになっていると思います。
展開が目まぐるしく変わります。
笑えるシーンも息を呑むシーンも、彼らは確かに生きています。
辛い物を沢山抱えて、慰め励まし支え合い。彼らは必死で生きています。
とりあえず、一章から読み始めて下さい。一章が気に入れば、きっと最後まで読まずにはいられなくなると思います。
少なくとも私はその一人でした。
男の子の友情、登場人物たちの恋愛模様、銃器と戦闘、カーアクション、バウンティハンター(賞金稼ぎ)、魅力的なオジサマキャラ――楽しく読める創作的要素の塊のような作品なのに、なぜか、この物語にはひりつくような疾走感とリアリティが存在します。
しっかりと「生きている」キャラクターたちが、自分の人生を歩んでおり、
深夜に読んでいると、ふと、今まさにどこかの街から外れた田んぼに囲まれた道で激しいカーチェイスが行われているのではないか、仕事を終えた登場人物が、ひとり自分の部屋で少し悲しい表情をしながら煙草をくゆらせたりしているのではないかと思わされてしまう、そんな不思議なリアリティです。
娯楽作品としてももちろん、日常パートとアクションパートのメリハリ、バランスが非常によく、読みだすと止まらない作品だと思います。甘いものとしょっぱいものを交互につまんでいるといくらでも食べられちゃう、あの感じです。
特に、登場人物が過去を回想する回は、つい引き込まれて感情移入せずにはいられないほど、どれも素晴らしく、ドラマを盛り上げてくれます。もっと沢山のかたに、彼らの人生を知ってほしい、ぜひ読んでほしいと思える作品です。
詳細は伏せますが、最新話(『16 写真と火葬』)まで読ませて頂き、思いもしていなかった展開に驚き、そして主人公二人の関係には、熱い涙が込み上げました。
いつか、精算の引き金が引かれる、決着のシーンが待ち遠しい。でも、いつまでもこの子たちの物語を読んでいたい、と、気も早くソワソワした気持ちになっていますが、これからも続きを楽しみに、応援させて頂きます。