迫力に圧倒された

私は自分の職業柄、官公庁のITにかかわることが多く、NICTや警察との商談に関わったこともある。そのためこうした組織は現実に存在していても、普通は攻殻機動隊の9課やニューロマンサーのチューリングと同じファンタジー組織として扱われているのに多少の違和感があり、読み始める前は少し腰が重かった。

しかしながら、読み始めたらやはり面白かった。キャラクターや構成もさることながら、組織や技術の取材がおそろしく正確で舌を巻いた。さすがにここはファンタジーだな、と思う脚色もあったが、この手のウンチク文章は、たいていプロや関係者が読むと書けば書くだけ恥ずかしくなるような間違いで溢れるのだが、本作は、少なくとも私の理解している範囲では、割り切って意図的にウソを書いている部分以外はとことんまでリアルに見えた。

これはプロの犯行だなと思い、作者のサイトを見たら、やはりwiredに寄稿するような技術系のライターということで納得。

トリックもうまい、展開も早い、文章もクールでキャラクターは格好いい、アクションシーンの疾走感も見事である。奔放で緻密で、情熱的で計算高い。なんか書くなら、このレベルを目指したいものです。

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