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概要
はっきり言って、いい話です(読まれないのでキャッチコピーをぶん投げる)
ピアニストの高瀬律は、脳炎の後遺症で、記憶が十秒しか保てない。婚約者だった菜穂のことも、会うたびに忘れ、何十回でも「はじめまして」と頭を下げる。
思い出も、未来の約束も、もう二人のあいだには積み上がらない。それでも律の指は、倒れる前に覚えた曲のすべてを覚えていた――手が、腕が、呼吸が。やがて菜穂は、律を二年前に倒れたあのコンクールの舞台へ送り出そうとする。演目は、三十分間ひと続きの、途切れたら二度と戻れないリストのソナタ。調律師となった菜穂にできるのは、彼の三十分が切れないよう、客席で息を殺していることだけだった。
思い出も、未来の約束も、もう二人のあいだには積み上がらない。それでも律の指は、倒れる前に覚えた曲のすべてを覚えていた――手が、腕が、呼吸が。やがて菜穂は、律を二年前に倒れたあのコンクールの舞台へ送り出そうとする。演目は、三十分間ひと続きの、途切れたら二度と戻れないリストのソナタ。調律師となった菜穂にできるのは、彼の三十分が切れないよう、客席で息を殺していることだけだった。
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