概要
夜ごと聞こえる足音。
誰も帰らなかった廃墟探索。
閉じたはずの記憶の扉。
喫茶店「アーバンテイル」には、今日も奇妙な話が流れ着く。
もう一杯のコーヒーを片手に、マスターと常連客は不思議な話を読み解く。
境界を漂う香りの行く先は、此岸か彼岸か、怪異かヒトか。
これは夜の世界をほんの少しだけ覗いてしまった人々の物語。
――深入りしすぎないよう、ご注意ください。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!深煎りの珈琲には甘いミルクを一匙
〈喫茶アーバンテイル〉にはいくつもの奇譚が寄り集まる。
確かに在るけれども目には見えない何か。
視線、匂い、音、虚像、味覚、記憶、そして怪異。
この物語は五感で味わうビターテイルだ。
それに、もしかすると物語の本質を読み解くには第六感も必要かもしれない。
「アーバンテイル」という名称も言い得て妙な店名であり、アーバンレジェンド、フォークロア、ネットロア……そういったものをよりあわせたかのような奇妙な語呂である。
不可思議な事情を抱えた人々の寄る辺となっている場所で語られる怪異譚という点では、いわゆる「奇譚クラブもの」というのもいいかもしれない。
どこか人好きのするマスターと常連客さん…続きを読む - ★★★ Excellent!!!コーヒーの香りと一緒に、じわじわと怪異が沁みてくる
喫茶店という、とても身近で落ち着いた場所を舞台にしているのに、そこへ一つ怪異の話が持ち込まれるだけで、日常の風景が少しずつ違って見えてくる。
この感覚がとても面白い作品です。
「喫茶アーバンテイル」でマスターたちが怪異について語り合うという構成も良いですね。怖い話をただ怖がるのではなく、「これは本当に怪異なのか、それとも別の理由があるのか」と考えながら読み進められるので、ホラーでありながらミステリーを読んでいるような面白さもあります。
そして何より、怖さの出し方が派手すぎない。
大きな音で驚かせるような恐怖ではなく、「あれ? なんかおかしくないか?」という小さな違和感が少しずつ積み重な…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「積み重なる不穏」と「人と怪異の怖さ」が好きなあなたへ
喫茶店で交わされる何気ない会話から始まる、少し不思議な怪異譚です。
【少しずつ積み重なる不穏】
最初はちょっとした違和感だったはずなのに、一つ、また一つと不穏なものが重なっていく。
読み進めるほど「これ、どうなってるんだろう」と先が気になり、それでいてどこかゾクリとするような感覚がありました。
【人の怖さと怪異の怖さ】
怪異そのものも怖いのですが、それだけでは終わらないのが面白いところ。
人の感情から生まれる怖さまで混じり合って、何が一番怖いのか分からなくなってくる。こういう怖さの重ね方もあるのかと、ゾクッとさせられました。
自分でも物語を書くからこそ、この構成の上手さに…続きを読む - ★★★ Excellent!!!コーヒーの香りに溶ける、答えのない怪異の余胤
怪異を題材にしているのに、読み終えたあと心に残るのは「怖さ」だけではなく、人と人が言葉や気持ちを通わせる温もりでした。
特に喫茶店で怪異を頭ごなしに信じも否定もしない姿勢がとても好きです。伝承を楽しみながら現実の可能性にも目を向けるので、「本当は何だったのだろう」と読者自身も自然に考え始めてしまいます。私は階段の足音と、物語の終盤で響く別の足音がどこか重なるように感じられた場面が忘れられません。同じ音なのに、受け取る人の心で意味が変わるのではないか…そんなことを考えながら余韻に浸っていました。
コーヒーの香りに誘われるように怪異譚を味わい、少しだけ誰かに優しくなりたくなる、不思議な…続きを読む