概要
そう思った月島紬《つきしま・つむぎ》が目を覚ましたのは、生と死のあわいにある不思議な駅だった。
薄明かりのホームに立っていたのは、人間の姿をした少年。
けれど紬は、彼が誰なのか、すぐにわかった。
差し出した手に触れる前、必ず一度だけ手の甲をこつんと押してくる癖。
歩くとき、いつも左側に回り込む癖。そして、日なたで眠った毛布みたいな匂い。
死んだはずの愛犬、リクだった。
「迎えに来たんじゃないよ。追い返しに来たの」
そう言ってリクが差し出したのは、過去へ戻るための切符だった。
行き先は、紬が置き去りにしてきた朝ばかり。
言えなかった言葉。
伸ばせなかった手。
守れなかった約束。
そして、最後まで見送れなかった、小さな背中。
リクに叱られ、手を引かれながら、紬は
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!やわらかく、心に針を刺す。印象的なストーリー
"人間はいつも、考えすぎる"
少年少女が語るようなやわらかい文体にもかかわらず真意・本質を突く鋭さは、まるで心を針で刺されるような想い。よかれの愛情が反比例するように日々重くなる重圧は、当の本人しかわかり得ないことだろう。そこを同じ人間だから逆に受け止められない・・・だからこそ"人間はいつも、考えすぎる"のかもしれない。
"朝が来る時、いちばん最初に出てくる色だよ。"
これは本当にそのとおりなのだけど、毎日の忙しさで人間が忘れている、美しさ。
そして光を失った彼女にとってはあまりにも重い。
そんな抱えきれない重さを(亡くなった)愛犬ならわかってくれるーー
人にわかってもらいたいのに、
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ペットロスの貴方へ。
私は5年前、愛犬を亡くしました。その日は土曜日で、私も妻も休み、夜勤の多い息子も夕方帰って来て、県外へ嫁いだ娘も里帰りしていました。家族が珍しく揃った日の夜を選んで、その子は逝きました。明日は日曜日だから皆で埋葬してねと。
この子はどんな思いで死んでいったのだろう。どんな気持ちで毎日暮らしていたんだろう。私たちのことをどう考えてたんだろう。しばらく、そんなことばかり思いました。
これは、まさにそんなペットを愛する人のストーリー。亡くなったペットとの再会。擬人化により、ペット自身が語るという設定。
人ではないものへの確かな愛情。小さな、でも尊い命への思い。それらがいっぱい詰まっています。
ペ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!涙と救いの現代ファンタジー
本作は、生きることの悩みや命の重みをテーマを取り扱いつつ、そのテーマに押しつぶされないようにあたたかく丁寧に描かれた作品となっております。
作中では、葛藤、死という選択を、正面から丁寧に向き合う、読み手の琴線に触れるエモーショナルな構造となっています。
単なるファンタジーというカテゴリに収まってはおらず、かつて愛したペットとの絆を通じて、愛おしさと切なさが同居した舞台設定を構築されているのが、作者様の手腕だと思います。
多くの読み手に共感される、失いかけた命の温もりを再び紡ぎ直していく、涙と救いの現代ファンタジー。
心の機微を描く作品が好きな方はぜひお読みいただければと思います。
おす…続きを読む