美しき古都に、女の情念が匂い立つ。京都の雨に濡れる愛人の体温。奈良の庭に、静かに佇む妻の白い指。自由を求めて逃げ出したはずの「私」を、見えない糸で手繰り寄せるのは、幼き日の約束か、それとも逃れられぬ宿命か。「待ってますから」と微笑む妻の唇は、毒のように紅く。庭で焼かれる毛虫の香りが、かつての無垢な日々を無慈悲に焼き尽くしていく。残酷なまでの純愛と、醜いまでの自己愛。古典「筒井筒」の調べに乗せて贈る、狂おしくも美しい大人の愛憎劇。
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