履歴に残る顔

夜更け、動画サブスクをつけたまま眠る“俺”の視聴履歴に、見覚えのない灰色のサムネと「日付＋時刻」だけのタイトルが紛れ込む。再生すると映るのは、天井隅から覗く自分の寝顔。翌日はベランダ、次はドアの隙間――視点は日ごとに近づき、履歴には“まだ来ていない”時刻「23:59」の項目まで現れる。管理会社は隣室が空き部屋だと言い、廊下カメラには灰色のノイズ。同僚には映像が再生されず、現象は“俺の端末だけ”で進行する。映像の足音は現実より一拍早く、画面と部屋の音が重なるたび、夜は均されていく。最後にレンズを覗き込むのは、俺と同じ顔――再生は止まっても、気配は止まらない。