まだ読み途中ですが、フライングレビューを書かせていただきます。
この物語の最大の魅力は、主人公エナの「不完全さ」にあると思われますな。
神の血を引くレクターでありながら、聖書を退屈がり、リンゴも満足に剥けない。彼女は選ばれた存在でありながら、決して英雄らしく振る舞えない普通の少女なのです。
しかしその弱さこそが、物語に深い緊張感を与えております。
白い髪という欠けた証、他者の視線への不安、それでも前に進もうとする意志。エナは「神話の後継者」ではなく、「制度に押し出された人間」として描かれ、その揺れ動く心が読者の感情を強く引き寄せます。
エナは強くない。だが、だからこそ彼女の旅はただの冒険ではなく、自分が何者であるかを問い続ける物語になるわけですな。
この物語は、エナという一人の少女の弱さと誠実さによって、壮大な神話を人間の物語へと変えています。
引き続き注目していきたいと思います。
宇宙創世の神話から始まり
星々と七大陸
母なる木プリムスが生まれる――
その壮大な神話譚と
少しポンコツで愛らしい少女エナの旅路が
やわらかく地続きになっていく物語です。
重く荘厳な「星族」の系譜や
「悪魔の子」「神獣」「魔の森」
といった言葉が並ぶ一方で
エナは本当は
冒険小説が読みたい年頃の女の子。
毒舌ぎみの天才薬師カリタス
寡黙な仮面騎士スピーヌス
巨大な狼リキ
そして
どこか憎めない大人たちとのやりとりが
港町や船上、氷の大陸、魔の森といった
舞台を軽やかに彩ります。
焚き火のぬくもり
まずいイカ墨パンの食感
雪を踏む足音──
細部の描写がとても生き生きしていて
頁をめくるたびに
星の光と吐く息の白さが
目の前に立ち上がるようでした。
やがて「魔の森」で姿を現す〝何か〟と
謎めいた白髪の少女の存在が
旅物語に静かな不穏さと
神話的な気配を添えていきます。
神話級のスケールと
人間くさくてちょっと笑える旅の空気。
そのどちらも好きな人には
続きが気になって仕方なくなる一作です。