週末の空
@unicorn66
第1話 ワンピース
車から見る外の景色は、私が暮らしている町から街へ変わっていく。
緑から灰色へ変わる街並み。。。
朝、私は目一杯のおしゃれをした。
服はママが昔、選んでくれたワンピース。
私のお気に入りでもあるけれど、特別な日にしか着ちゃダメだめなのである。だから、着るのは今日で3回目。1回目はママの妹の結婚式に行ったとき。叔母さんのウェディングドレスも綺麗だったな。2回目はピアノの発表会。キラキラしたレースと後ろに付いた大きなリボンが可愛いって、ピアノの先生に褒められて嬉しかった。そして、今日が3回目。
大好きな納豆とご飯を食べ、食器をキッチンまで持っていき、手を洗い、歯磨きをして、顔を洗い、ワンピースの似合う自分に変身するのだ。
久しぶりに着たワンピースは膝が見える丈になり、短くなっていたが可愛さはそのままである。
ワンピースが可愛すぎて、鏡の前でくるくると回ってみる。
「もう出かけるから、急いでね。後ろ向いて、リボン結んであげるから。」
ママもいつもより美人に見える。何が違うのかはわからないけれど、ママはママで目一杯のおしゃれをしたのだと思う。
「ありがとう。ママ。」そういうと私は自分の部屋へ行き、ピンクに小さいハートがたくさんついたお気に入りのハンカチと甘く良い香りのするポケットティッシュをポシェットに詰めた。
白くて丸い肩からかけるかばんはお誕生日におじいちゃんとおばあちゃんに貰った、宝物。
パパとママの頭を見ながら、車に揺られてるのは退屈なので頬杖をつきながら外を眺める。
いつもと変わらない。木と畑だらけの世界だ。
「ここから、どこかプリンセスの住むような世界に行けたらいいのに。」
「何か言ったか。大丈夫か。まみこ。」パパがミラー越しに話しかけてきた。
どうやら心の声が口から飛び出していたらしい。
「何も言ってないよ。早く着かないかな。横浜のデパート。」そう言うとまた目線を外に向けた。
雲は止まったままのように感じる。
気がつくと外はビルばかり建っていた。
「わぁ。」と思わず声が出た。
「ほら。もぅ着くわよ。少し寝れたかしら。」ママがいつもより嬉しそうである。それは声の高さで感じ取ることができた。
車から降りてパパが
「まず一階から行くか。」と両手を空に広げた。
すかさず私は「運転お疲れ様です。」というとパパもママも口を大きく開けて笑った。
一階に着き、デパートに入ると同時に華やかな香りが広がった。そこにはキラキラとした化粧品がたくさんあった。まみこには使い方とかはよくわからないけれど、とにかく全てがキラキラと輝いていた。キラキラした光が目に映り、まみこの目まで輝いた。ポシェットの紐を胸の前で両手で強く握りしめた。右に左に首を動かしていると
「上に行こうか。エスカレーターで順番に見ていこう。」パパを先頭に一列になって歩く。
エスカレーターを一つ上がる毎に何か、自分のレベルも上がっていく気がして、背筋が伸びた。
エスカレーターから目線を上にやると、大きなシャンデリアが見えた。思わず口が開いてしまった。絵本でしか見たことのなかった、シャンデリア。
「プリンセスとかが住んでいるところにしかないと思っていた。」指を刺しながら目を丸くして、まみこは言った。
「凄い綺麗だろう。」
「ママもここに来るたびにシャンデリアに見惚れちゃうわ。」
一気にプリンセスになれた気持ちがした。
エスカレーターから降りる時、つま先から降りて足音が鳴らないように努力した。
6階の子供服売り場でパパとママが降りたので私も続いた。
服屋さんの鏡にスカイブルーのワンピースに白いポシェット、白いエナメルの靴。友達と作ったビーズのネックレスでおしゃれをした自分が映っていた。
いつの間にか、両手でスカートの裾を軽く摘み上げていた。
「まみこのワンピース。もぅ。丈が短くなってきてるでしょ。新しいのを買いに来たのよ。一緒に選びましょ。」
パパとママは私のためにデパートに来てくれたらしい。
また、一つ私のお気に入りのワンピースが増える。
週末の空 @unicorn66
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。週末の空の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます