第12話 血の記憶の始まり
午後の陽光が遊園地全体を照らす。観覧車はゆっくりと回り、子どもたちの歓声が空気に溶け込む。颯斗と彩は、夏休みの好奇心に導かれて、人の少ない裏手の通路へと歩みを進めた。
「ねえ、こっちって昔、建設中に事故が多かったって本当?」彩が小さな声で尋ねる。
颯斗は肩をすくめながら、錆びついた小屋の方を指さす。
「うん……でも、もう大丈夫って話だよ。誰もいないし、ちょっと探検してみようか」
二人が歩くたび、微かに冷たい風が頬を撫で、遠くの観覧車のゴンドラの影が不自然に揺れた。その瞬間、赤い光が一瞬、木々の影に映る。ピエロの残滓だ。人の目には見えないが、空間の奥深くで、過去から続く恐怖の片鱗が揺れていた。
「……何か変な感じがする」彩は手をぎゅっと握る。
颯斗も違和感を覚えた。音も人もないはずの通路に、微かな囁きが混ざる。
「……でも、面白そうだ」颯斗は勇気を振り絞り、彩を促す。
通路の奥には小さな建物があった。扉はわずかに開き、白い光が中から漏れる。近づくと、そこに立つのは白い衣の女——契約の意思を具現化した存在だった。
「……あなたたち、ここに来る運命だったのね」
女の声は穏やかだが、どこか冷たく、空気を震わせる。二人は思わず足を止める。
「え……えっと……誰ですか?」彩が震える声で尋ねる。
「私は契約の使い……あなたたちが望むかどうかに関わらず、命を繋ぐ道を示す者」
女の手には光る護符が浮かび、空気に微かな振動を与える。
「命を繋ぐ……?」颯斗は戸惑う。だが、何か引き寄せられるように、二人は自然と護符に手を伸ばした。その瞬間、周囲の光景が歪み、赤い光の残滓が微かに空間を包む。
「契約は、未来を背負う者に宿る」
女の囁きと共に、二人の心に重い決意が刻まれる。恐怖と好奇心が混ざり、無意識のうちに二人は頷いた。
その瞬間、世界の端がひずみ、過去の森や村で交わされた契約の影が微かに揺れた。影山は遠くから懐中時計を握り、未来を守るために時を見守る。干渉は最小限に抑えられる。
「……これで、運命は始まったのね」白い衣の女は微笑むように囁き、光と共に姿を消す。赤い光の残滓だけが残り、遊園地の空気に不気味な余韻を残した。
颯斗と彩は互いに顔を見合わせ、まだ何が起こったのか理解できない。しかし、手に残る微かな温もりが、知らず知らずのうちに二人を契約の連鎖に巻き込んでいた。
「……怖いけど……これからどうなるんだろう」彩が小さくつぶやく。
颯斗は握り返し、微かに笑った。
「大丈夫だよ……ぼくたちなら」
その背後で、赤い衣のピエロの残滓が微かに揺れる。遊園地に刻まれた過去の恐怖と契約の意思は、二人の選択に呼応して静かに目覚めた。
こうして、颯斗と彩は知らずに白い衣の女と契約を結び、血の契約の連鎖が現代に顕現する。
ここから物語は、「廃遊園地のピエロ」本編へと続いていくのだった。
廃遊園地のピエロ 血の契約の記録 もちうさ @mochiusa01
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