【世界皇帝ドルビ】掌編小説

統失2級

1話完結

26歳の若き世界皇帝ドルビ・アイルテンⅡ世は女性器が苦手な男だった。その為、彼には妃も側室も居なかった。しかし、性欲らしきものは保有していたので、女性器がモザイクで隠されたポルノを鑑賞するのを趣味としていた。そんなドルビではあったが、最近はポルノ界に不満を募らせていた。その不満とはポルノ界に蔓延する美容整形によって作り上げられたポルノ女優たちのサイボーグ的な不自然な容貌であった。ドルビの不満は次第に膨張していき、我慢の限界に達した時には遂に思い立って、世界中の全ての美容整形外科医を処刑するという決意を固め、躊躇う事なく実行に移した。また、「美容整形をしているポルノ女優は直ちに引退せよ。従わぬポルノ女優は全員を処刑とする」との勅令を出した。すると、暫く経つとポルノ界にはナチュラル美人ばかりが在籍するようになった。美容整形外科医の遺族たちからは恨まれる事になったドルビではあったが、彼の権力は盤石であり、その地位が脅かされる事は無かった。ドルビはナチュラル美人ばかりになったポルノ界に満足し、益々、ポルノを愛好するようになっていった。そして、ドルビはポルノと同じくらいバイクを愛していた。その為、ドルビは夜な夜な数人の護衛たちと共に宮殿を抜け出しては、ツーリングに出掛けていた。ドルビはノーヘルで夜の街を疾走する感覚を好む男であったので、法律を改正してヘルメット着用の義務は廃止にしていた。その夜もドルビは6人の護衛を引き連れて、ノーヘルでバイクに跨り街を疾走していた。ドルビの運転テクニックには卓越したものがあったのだが、誰でも時にはミスをするのが世の理である。ドルビも御多分に洩れず、その夜はミスを犯してしまった。ドルビは緩やかなカーブで運転操作を誤り顔面から電信柱に衝突してしまうのだった。


ドルビの美しかった容貌は見るも無残に崩壊した。ナルシストだったドルビに取って、鏡に映る現在の崩壊した容貌は究極の苦痛の元だった。しかし、美容整形で容貌を整えようにも、3年前の美容整形外科医一斉処刑によって、世界中からは美容整形の技術が失われていた。美容整形に救いの道を求める事も出来ず、ドルビは人に会うのが苦痛になり、自室に篭もるようになった。執事が食事を運んで来る時にはドルビは自室の別の奥の部屋に隠れて顔を見られない様にしていた。そんな、ドルビの楽しみは3食の食事とポルノだけになるのだった。こうして全人類108億人の頂点に君臨する世界皇帝ドルビの生活は巷間の下々の引き篭もり弱者男性の生活と何ら変わらぬものになってしまうのでありました。

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