体育祭4




「続いての種目は女子リレーです!」


女子リレーが始まった。


私は赤組のアンカーを任されている。走るのには小学生の頃から自信がある。




前の走者にバトンが渡った。軽くジャンプをして体をほぐす。


今のところ白が1位を独走している。続いて、青、赤、黄の順番で競い合っている。




「ごめん、お願い!」


「任せて!」



バトンを受け取って、一気にスピードを上げる。


風の音、歓声、全てが混ざって頭の中が真っ白になる。





「瑞稀先輩!いけー!」





数えきれない声援の中、なぜか蒼真の声だけがはっきりと聞こえた。


思わず笑みがこぼれる。



その勢いのまま、私は前を走る白を抜き、ゴールテープを切った。




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「瑞稀!お疲れ!めっちゃすごかった!」


「ありがと。晴菜の声、ちゃんと聞こえたよ。」


そう答えつつ、私の頭の中に残っているのはあの蒼真の声だけだった。




私はあの声に背中を押してもらった。ちゃんと後でありがとうと伝えよう。





「あ、待って。男子リレー始まっちゃった!飛鳥の応援に行かないと!一緒に前行こう!」


そのまま晴菜にひっぱられて、最前列へとやって来た。





「あ、あれ蒼真くんじゃない?今バトン受け取った!」


見ると、ちょうど蒼真にバトンが渡るところだった。





蒼真が目の前を駆け抜けて行く。



「蒼真ー!頑張ってー!」



さっきのお礼の気持ちを込めて全力で叫ぶ。


すると、彼はちらっとこちらを見て、にやりと笑った。



そのまま前に走る相手を追い越した。





ーーーちゃんと届いたんだ。





そう思った瞬間、胸の奥が少し熱くなった。





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ずっと、隣で笑えるように @ayaya05

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