第9話〈遊戯〉

彼は、武器トロフィーを右手に持ったまま、カバンも持たずに家を飛び出した。それが、明らかに異様であるということに気づく余地が、彼にはもうなかった。外に出た瞬間、薄暗いはずであるが、少し明るく感じた。彼は振り返ると、武器トロフィーを左手に持ち替え、右手でスボンのポケットから取り出した鍵を握った。そしてそのまま、いつも通り、ドアに鍵をかけようとした。


 あれ…これ、どっかで…?


完全に緩みきっていた左手から何かが抜けた。


「もういっかい、あーそーぼ!!」


 ドンッ!


後頭部に、強く、そして鈍い痛みが、走った。


 な!?!?なにぃ!?ま、まさか…!?い…、いたのか!?奴が!しかも、声からして…、こ、!?ううっ…。これはまずい……。


背後に確実にある奴の存在。それを感じていながらも、身体は直立したまま、硬直していく一方であった。朦朧とする意識の中で彼は、それでも脳を動かさずにはいられなかった。


 まさか俺がトロフィーで殴られることになるとは…。しかも奴が子どもだったとはな…。別にカウンターも通れたわけだ。まったく、してやられたな…。奴はどこまで読んでいたんだろうか…?もしあの置時計はフェイクで、時刻が意図的に設定されていたのなら、今背後にいる奴は何者で、今はいったい何時頃いつごろなのだろうか…?


 所詮は、ただの奴の、か…。


この惨劇が、単なる子どもの遊びに過ぎなかった、という事実よりも、何より一番恐ろしいのは、今の惨劇が、何回目にあたるものであったのかが分からない、という点にあったーー。



もういっかい、読む?

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極限遊戯 @Cookymon

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