エピローグ
### エピローグ:幸せの象徴
5人の少女に囲まれていた高校生活の1年半。それは柊一真にとって、一番高校生として楽しめていた時期だった。汗と涙を流し、恋と友情を育む。バスケットボールという共通の目標を通じて、互いの存在の大きさを改めて実感した、かけがえのない日々だった。
文化祭の後、一真は練習中の怪我でレギュラーから外れた。インターハイには間に合わなかった。どうせ間に合わないのであればと、リハビリをしながら、女子バスケのマネージャーを始めた。由季と雄宇、それに咲を応援できるのが楽しかった。
高校3年になると、咲を中心とする2年生チームと由季と雄宇は、見事、県大会を優勝し、ベスト8まで勝ち上がった。一真は、マネージャーとして彼女たちを応援できるのが楽しかった。彼女たちの活躍は、一真にとって、何よりも嬉しいことだった。
高校を卒業して、五年の月日が流れた。富岳の街は、相変わらず穏やかで、あの頃と何も変わらないように見えた。だが、柊一真の周りの世界は、大きく様変わりしていた。由季と雄宇、そして咲は、一真の子を宿していた。
由季と雄宇は、一卵性の双子の女の子を妊娠しており、咲もまた、女の子を妊娠していた。だが、咲は具合が悪かった。医師からは、このままでは出産できても母体が危険だと言われていた。
一真は、そんな咲のために、婚姻届と指輪を用意した。咲は、由季と雄宇に悪いと、気にしていたが、一真の気持ちを汲み取り、喜んだ。
「ありがとう、一真くん。短い間でも、あなたの妻になれるなんて、夢みたい」
咲の声は、弱々しかったが、その瞳は、一真への愛で輝いていた。
一真は、婚姻届を提出するため、市役所へと向かった。婚姻届を提出し、富岳の街を歩きながら、一真は、咲とのこれまでの日々を思い出していた。咲との出会い、初体験、そして、由季と雄宇との関係を壊すつもりはないと告げた、あの日の咲の言葉。
一真は、咲の優しさに、改めて心を打たれる。
一真が市役所から戻ってくると、咲の容態は悪化していた。急遽、帝王切開で出産が行われたが、咲の状態は良くなかった。
咲は、一時的に意識を取り戻すと、一真の顔を、愛おしそうに見つめた。
「短い間でも、あなたの妻になれて、嬉しい。子供のこと、お願いします」
そう言って、咲は、静かに息を引き取った。
咲の死と時を同じくして、由季と雄宇の分娩が始まった。
由季と雄宇は、無事に一卵性の双子の女の子を出産した。
出産が終わった由季と雄宇に、一真は、土下座した。
「由季、雄宇、本当にごめん。咲と短い間だけど入籍した。咲は亡くなった。咲が残した女の子を、俺が引き取りたいんだ」
一真の声は、震えていた。
由季は、涙を流しながらも、一真を抱きしめた。
「あなたも、辛かったのね。一真くん、一人で抱え込まないで。私たち、家族でしょう?」
由季の言葉に、一真は、由季との絆を、改めて強く感じていた。
雄宇は、一真の隣に座り、涙ながらに微笑んだ。
「姉妹五人で、バスケのチームを作りましょう。由季お姉ちゃん、私の娘、そして咲の娘と、みんなで」
雄宇の言葉に、一真は、雄宇との絆を、改めて強く感じていた。
両親を含めると10人所帯と大所帯になったが、一真にとっては、それは何よりも幸せの象徴だった。妻たちには頭が上がらない。
由季と雄宇、そして一真の三人は、互いの絆が揺るぎないものであることを知っていた。それは、血の繋がりを超えた、愛と信頼で結ばれた、三人だけの「家族」の形。そして、その絆は、これからも、永遠に続いていく。
時は流れ、咲の娘、由季の娘、そして雄宇の娘、五人の姉妹は、かつて由季と雄宇と一真の三人が通った富岳高校に入学した。
五人姉妹は、高校一年生ながら、バスケ部のレギュラーを勝ち取り、そのまま、その夏のインターハイで、全国優勝を果たした。
姉妹を応援しに行った由季と雄宇と一真の三人。一真の手元には、咲の遺影があった。
遺影の中の咲は、一真に、そして由季と雄宇に、微笑みかけているようだった。
由季と雄宇、そして一真の三人は、咲の娘と、由季の娘、そして雄宇の娘、五人の娘たちの活躍に、涙を流しながら、互いの手を握り合い、互いの温かさを感じていた。
五人姉妹は、富岳の街の新たな伝説となり、彼女たちの青春は、これからも、輝き続けるのだろう。
富岳バスケットボール・デイズ 舞夢宜人 @MyTime1969
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