分刻み

Kei

分刻み

畜生 しょうもない会議が長引いた

打ち合わせに遅れそうだ

タクシーを…



やっと来た 5分も待たせやがって



「急いでネオキャピタル・ビルまで」 


「はい」



「ちょっと停まるなよ!信号黄色だっただろ!?」


「申し訳ありません」


「あのな、こっちは分刻みで生きてんだよ!一分遅れたら百万単位で飛ぶんだぞ?チンタラ車流してるあんたと違って… 客のペースに合わせろよ!なぁ」


「分刻みですか?わかりました」


「うわッ!」



赤信号の中タクシーは急発進した。前の車を追い越し、交差点に飛び出していった。

対向車線からトラックが右折してくる。

タクシーはスピードを上げながら突っ込んでいった。



「危ない!!」




 …


  …



ぶつかってない



フロントガラスの目の前にトラックが迫っている

道端のカラスが羽ばたく姿で固まっている

音が聞こえない


時間が止まった?  いや じりじり動いてる

タクシーも トラックも カラスも


外に出…


体が動かない これは一体…?



「分刻みです」



「お客さんに合わせて今、時間を刻んでいます」


!?


「ぶつかりません。刻み続けている分には、永遠に」



「しかし、刻むのをやめたら加速します。タクシーも、トラックも、お客さんも。どうしますか? …いや、間に合わなさそうですね。余裕のある生き方には」

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分刻み Kei @Keitlyn

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