まず、タイトル勝ち。そして中身はもっと面白い。日常の不調やメンタル、他作品に影響されやすい瞬間まで、「創作しないほうがいい時」をユーモアと実感で描いたエッセイです。冒頭のぶっ飛んだ例えに、いきなり心を掴まれました。「ペットのサンショウウオが幽霊に取り憑かれて、スマホをハッキングしてきた」なんて、そんな発想あります?(しかもオチに「面白いのでどうなったか教えてください」。ここで作者の距離感と読者サービス精神が伝わります)
本書の良さは、笑いだけで終わらないところ。体調が悪いときは「創作はお休みして、必要なのは食事と睡眠」。さらに元気の合言葉として「『おいしい・うれしい・たのしい』が大事」と、実用メモがスッと入る。読者の罪悪感を外してくれる優しさが光ります。
創作の動機を問われての返答も最高でした。「それはもちろん、『もったいないから』です」「せっかく思いついた話、書かないでいたらいずれ私と一緒に灰ですよ」。肩の力が一気に抜ける、でも前へ進みたくなる名フレーズ。
また、読後ハイの危うさを「最悪、劣化コピーになりかねません」とピシャリ。すぐ書かずに寝かせる判断を勧める実務目線も頼もしいです。
個人的にいちばん好きなのは、「ド素人ミステリー」の発明。「誰でも簡単に書けるミステリー、それが『ド素人ミステリー』!」からの、「トリックに穴があっても…むしろリアリティ」という逆転の発想。創作のハードルを下げる、勇気の出る提案です。
そしてセルフツッコミ芸のキレ。「好きです」「僕も」「二人はラブラブでした」の「恋愛」例や、「ポリシーというものが無いんでしょうか」まで、痛快な自己解体が続いて読者の頬がゆるみっぱなし。
総じて——
・ためになるのに軽やか
・弱っている人にも刺さらない優しさ
・発想の転がし方がうまい
・作中リンクで他作へ飛べる「導線」も親切
「創作したくない日」に読むべき一冊。読み終えたら、きっと少し笑って、少し休んで、でも結局また書きたくなる。そんな不思議な背中の押し方をする、ユニークで温かいエッセイでした。
何か新しいものを創作することには痛みや苦しみを伴うことが多い現代。プレッシャーや時間制限に追い込まれている場合はなおさらです。
しかし、そんな時こそ、ふ……と力を抜くことができたら。
頭ではわかっていても身体は嘘をつきませんよね。自分を労ってあげてください。このお話はそんな気づきに与えてくださるありがたみに心が和みます。
創作のノウハウ論は世に溢れていますが、この創作しない論という発想は珍しく、一瞬虚をつかれるようなインパクトを受けます。
体調がすぐれない時、精神的につらい時は追い込みたくても追い込めない。そんな経験はありませんか?
すごく面白い作品を見た直後?
こんな時も創作しない方がいいのだというのですが、何だか面白そうですね。
丁寧な解説つき。都度納得しながら読み進められる満足感の高い構成となっています。
作者様は創作論っぽく装った変なエッセイもどきと謙遜されていますが、そんなことはありません。
経験者が語るからこそ説得力があり共感を呼ぶのです。そして作者様ご用達のユーモアも交えた笑いありの貴重なエッセイでもあります。
この機会にぜひ手に取ってみてください。
メジャーリーガーとか、プロスポーツの選手を見て、
うわあこの人は、日頃から何を食べたらこんなにデカく強くなれるんだろう?
と思ことありますよね。
この例えが最適なのか不明なのですが私の場合、志草先生がそれに当てはまりまして。
……いや人体の話ではなくてね?
この人は普段、何を考えてて、何を趣味として、どんな生き方をしていたらこんな物が書けるんだろう!? とずっと思ってたんですよ。
ずっと思ってたところに、こんな創作論を出してくれるのだから。
良い時代になったもんです。
その名も創作しない創作。
この先生が、今まで書かなかった物とか、手を出さなかったジャンルとかを引き合いに出しながら、
先生が今まで書かれたもののリンクまで貼ってあります。
まあ、言い方を変えれば、志草ねな入門書ですなこれは。
……聞きたかったこと、盗みたかったもの、そういうことじゃねえんだよなあ……と、うまくあしらわれた気がしないでもありませんが、
まだ、志草先生の文学に触れたことのない方はいっぺん、この先生の文学には触れるべきだと思う。私はお勧めします。
あまり、見たことない類の文学と笑いです。
ご一読を。
何かを生み出すことに少しでも携わったことがある人なら、誰もが一度は感じるであろうプレッシャーや焦燥感。
志草ねな氏のエッセイ『創作しない論』は、そんな張り詰めた心を軽くしてくれる、まるで優しい保健室の先生(比喩あってるかな?)のような内容でした。
まず素晴らしいのが、タイトルにもなっている「創作しない」という視点。
普通なら「どうすればもっと良いものが作れるか」という方向へ向かいがちな創作論とは真逆の発想で、「今は作らなくていいんだよ」と徹底的に寄り添ってくれます。
体調が悪い時、心が疲れている時、そんな当たり前の、でも見過ごしがちな自分からのSOSを最優先することの大切さを、具体的な言葉で教えてくれます。
「『すみません体調不良でした』で良い」という言葉には、どれだけのクリエイターが救われることでしょうか。
というか、今コンテストの締め切りに追い込まれて血反吐出しながら書いてる私にはとても耳の痛い内容でした笑