42年間、推している人がいます
大田康湖
42年間、推している人がいます
13歳から足かけ42年間、推している人がいる。俳優・声優の
声優や吹き替えに詳しくない一般の人に説明する際、「安原義人の代表作は」と聞かれると悩むことになる。1970年代から活躍しているが、アニメでは主人公を演じることが少ない。何度かメジャー作品の主人公を演じるチャンスがあったが、スケジュールが合わない等の理由でふいにしてきている。
アニメでは2025年現在では『ゴールデンカムイ』の
吹き替えはミッキー・ロークやゲイリー・オールドマン等、フィックスと言われる俳優を数人持っているが、近年では『ベター・コール・ソウル』のボブ・オデンカークが専属に近い。マシンガントークやアドリブを生かした演技が得意というのも安原氏の好みに合っているとインタビュー等で語っている。
私がバードマンに本格的にはまったターニングポイントの回は116話「休暇は楽し」。パーマンたちをねぎらうために休暇を出したバードマンだが、パーマンたちは結局事件解決に出動してしまい、バードマンはパーマンたちに「いい加減な人」だとなめられていることがあからさまになる話である。「親の心子知らず」と感じた私はバードマンに同情し、そのうちにバードマンとパーマンたちを親子に見立てて妄想をくり広げるようになる。
安原氏は同時期にアニメ『キャッツ・(正しくはハートマーク)アイ』でもう一つの代表作となる
しかし、関東地方では『キャッツ・アイ』の裏で『忍者ハットリくん』を放送しており、我が家は『ハットリくん』を見ていたので存在を全く知らなかった。たまたま『ハットリくん』が休止になった日、チャンネルを回して初めて『キャッツ・アイ』を見た私は、俊夫が「待てぇー、キャッツ!」と叫ぶのを聞き、バードマンの声であることに驚いた。それから私は安原義人の演技の幅広さを意識して見るようになる。
1985年から吹き替え放送が始まった米ドラマ『特攻野郎Aチーム』では、「ブラジャーからミサイルまでなんでも調達する」とOPナレーションで自己紹介する色男、「フェイスマン」ことテンプルトン・ペック役を演じていた。たまたま土曜の昼下がりに自宅で1話を見た私は偶然の出会いに興奮し、毎週欠かさず見るようになる。『パーマン』以降の安原義人はアニメより吹き替えに比重が多くなっていき、私も追っかけてたくさんの吹き替え作品を見ることになる。
1987年2月には人気刑事ドラマ『太陽にほえろ!』シリーズの後番組として始まった刑事ドラマ『ジャングル』に、レギュラー刑事の
元々安原氏は舞台俳優であり、以前にも
安原氏演じる明石亀雄は警部補で、思春期の息子の扱いに悩んでいるという設定だった。刑事部屋では孫の手を愛用していたり、決まったネクタイをしている等の演技のこだわりが随所に見受けられる。捜査は地道に足で稼ぐタイプで、本編でメインになった話は数話しかないが、毎回の出番を見逃さないようテレビを注視していた。
続編の『NEWジャングル』では、ある回で明石が犯人に撃たれて病院に運ばれるシーンがあり、私は修学旅行先のホテルでハラハラしながら見守っていた。なお、同室のクラスメイトたちは私が何故こんなおじさんを推しているのか分からなかったようだ。
『NEWジャングル』終了後も安原義人は吹き替えを中心に声優・舞台俳優としての仕事を続けた。
氏の所属する劇団『テアトル・エコー』は現在も恵比寿にある新劇場を1992年に完成させた。こけら落としの演目は井上ひさしの『
確か1990年にテレビ朝日で始まった洋ドラ『スターマン』は、映画『スターマン』の続編となるドラマで、内容も私好みだったので熱心に見ていた。
宇宙人で、亡くなった地球人「ポール・フォレスター」の姿を借りている主人公を安原義人、地球で結ばれた女性との息子を
『特攻野郎Aチーム』『スターマン』のようなファミリー向けの作品ばかりではない。安原義人が当時吹き替えで得意としていたのがミッキー・ロークで、彼の主演した映画『ナイン・ハーフ』が『日曜映画劇場』で放送されたときはあまりの色っぽさに家族と一緒には見ていられず、応接室の別のテレビで見ていた。
1990年代に就職して一人暮らしを始めてからは、推し活も本格的になった。安原義人が主人公を演じるアニメ『闘士ゴーディアン』の10万円もするLD-BOXを夏のボーナスで購入したり、テアトル・エコー等の出演舞台を見に通ったりした。
また、安原義人にも『るろうに剣心』の
2003年には映画として復活した『パーマン』でバードマンを再演することとなり、私も大興奮だった。安原義人は自分の出演作品を見直すのが苦手だとインタビューで語っており、この時も30分の作品中で当時の演技を取り戻す過程が
2025年現在、安原義人が若い頃に演じたアニメ作品が次々とリメイクされ、若手声優が氏の役を引き継ぐことが増えている。興味深いことに引き継ぎ声優はバラバラで、氏の演技の幅広さを改めて認識させられた。
2020年代初頭にはコロナ禍で舞台公演もなくなり、舞台で生の安原氏を見る機会もなくなったが、2023年からようやく舞台が復活してきた。朗読劇等、新たなスタイルの舞台にも出演するようになり、さらに活躍の幅は広がっている。
若い頃から途切れなく活動を続けてきた安原義人だが、2025年には76歳となる。大病やトラブルもなく活躍され、新たなファンも増え続けていることは本当に喜ばしい。これからも末永く活躍していただきたいし、私も見守っていきたい。
42年間、推している人がいます 大田康湖 @ootayasuko
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